「歌が多くを語る」運び屋 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
歌が多くを語る
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イーストウッドが自分の監督作の音楽を自ら手掛けるほどの音楽好きで、ジャズピアノを嗜むことはファンにはよく知られているし、カントリーシンガーを演じた『センチメンタル・アドベンチャー』のように、トレードマークとのしわがれ声で歌ってみせた作品もある。ただし、ここまでカジュアルなノリで歌いまくった映画も珍しい。イーストウッド扮する主人公は、ドラッグの輸送で全米をドライブしながら、カーステレオに合わせて歌いまくるのだ。
この主人公の老人のお気楽なノリは、彼の魅力でもあり、強面のギャングの心を軟化させ、また、彼自身を軽率に犯罪の世界に足を踏み入れてしまった遠因にもなっている。
巧いなあと思うのは、ガンで死ぬゆく妻を見舞った際には、カーステで流れていた「More Than Yesterday」の歌詞がそのまま愛の言葉になっていること。いかにもハリウッドらしいやり口だが、こういう脚本の妙にまんまと乗せられるのが、悔しいというよりも心地いい。
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