「これまでにない「軽さ」」運び屋 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
これまでにない「軽さ」
今までのクリント・イーストウッド監督作品のイメージとは打って変わって「軽さ」の目立つ映画だった。
ひょんなことから悪事の片棒を担ぐことで大金を手に入れた主人公の老人。これまで家族にして来なかった事を埋め合わせる様に景気よくそのお金を使う彼だったが、最終的にはその仕事を手放した時に、ようやく大切な真実にたどり着くという皮肉。
女好きで意地っ張りで憎まれ口ばかり。見方によっては最後の最後まで自分勝手な主人公だが、残り僅かな人生に対して、自らの罪を正面から見つめて結末を受け入れる、潔い人物にも描かれている。
主人公が飄々と「軽く」描かれる事で、その結末の重さが際立つと感じるかもしれないし、むしろ前向きなラストと捉えられるかもしれない。
大きく観客の感情を揺さぶってくる様な作品ではないが、ジワっと心に残る映画だった。
ただ、個人的な好き嫌いで言うと、『普通』。
やはり彼の作品は、あの重苦しい雰囲気あってこそ。
這いつくばる様にして悩み、葛藤し、苦しんでもなお、人は思い描いたゴールにたどり着くことなんかできなくて…でも、だから尊いんだ、って教えてくれる。
そんな彼の作風が好きなので。
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