劇場公開日 2019年3月8日

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「頑固ジジイの・・・」運び屋 xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5頑固ジジイの・・・

2019年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

クリント・イーストウッドの映画、それも本人が主演した作品の主人公の性格は皮肉れている。いつだってそうだ。
あの「グラン・トリノ」にしても、「人生の特等席」にしても、今という時代についていけず、不満や不平を言い放つ。もちろんパソコンやスマホといったIT機器は大嫌いだ。このアールにしても、自分の職業を追われたのがインターネット通販によるものだから、頭にくるのはよくわかる。そんな時代についていけない人たちの声を代弁し、負けるのはわかっていてもそれでも言わないと気が済まない。

この映画に出てくるイーストウッドは、まあ、よぼよぼ一歩手前といったところか。
歩き方にしても、時速にして3.5キロくらいか?
話す速度も通常の人の半分くらい。
なんにしてもまどろっこしいのだ。
あのダーティ・ハリーの拳銃を打つ時の格好良さはどこにいった!
そりや〜、仕方ないだろう。なんせ、88歳だぜ。
だけど、一つのことをやらせるとすごい。運転にしても不器用に見えて確実にことを運ぶのだ。あまり複雑に考えず、やらせてみせるのなら、88歳の男に任せるのが無難だって思わせる。

アールが人生を振り返って、一番悔いが残るのが家族のことだ。
娘の結婚式にも、孫娘の卒業式にも、自分の仕事を優先させて行かなかった。それなのに、孫娘の結婚式にはちゃっかり行こうとした彼に、孫娘は喜び、娘は自分勝手と叫び、妻は優しくNOと言った。3人3様の受け答えがあった。
そして、最後の法廷で「自分は有罪だ」と言って、裁きを受ける。
それは運び屋としての罪と同時に、家族をないがしろにしていた自分の人生に対しての有罪だったのではないかと思う。そして、なんとも言えないのが囚人たちの労役のシーン。満開に咲いた花をみて満足そうなアールの顔。この場面を見ただけで、ぼくも涙が出たのだった。評価A

xtc4241