「山萌え風薫る岩手産クラフト映画。 映画観る時は影の一番濃いとこ観んだよ。」影裏 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
山萌え風薫る岩手産クラフト映画。 映画観る時は影の一番濃いとこ観んだよ。
盛岡に転勤してきた会社員・今野とその同僚・日浅、影裏を隠し持った2人の交流と心情の機微を描き出したヒューマンドラマ。
監督は『るろうに剣心』シリーズや『ミュージアム』の大友啓史。
主人公である今野秋一を演じるのは『ヘルタースケルター』『怒り』の綾野剛。
今野の元恋人、副島和哉を演じるのは『ピースオブケイク』『狐狼の血』の中村倫也。
日浅の父、日浅征吾を演じるのは『風立ちぬ』『シン・ゴジラ』の國村隼。
日浅の兄、日浅馨を演じるのは『猫の恩返し』『ビリギャル』の安田顕。
謎に包まれた今野の同僚、日浅典博を演じるのは『探偵はBARにいる』シリーズや『舟を編む』の松田龍平。
テレビ岩手開局50周年企画。原作は芥川賞を受賞した純文学らしいのだが、こちらは未読。
大友啓史監督曰く、本作はクラフトビールならぬクラフト映画。
岩手県出身の大友監督が岩手県在住の原作者の書いた岩手県を舞台にした岩手県の物語を岩手県で撮る、という地元に密着したまさに”地映画”と呼べる一作。
美しい渓流や緑の山々、盛岡名物さんさ踊りなど、岩手の豊かな自然やお祭りなどが前面に押し出された、観光促進PRのような映画である。
映像の美しさは誰もが認めるところだろうし、綾野剛と松田龍平の組み合わせにはケミストリーを感じることが出来た。
身近にいた人間が忽然と姿を消す、というのは純文学では割とありがちな展開だが、本作はそれと3.11とを組み合わせることで物語に必然性が生まれていたように思うし、日浅の裏の顔がだんだんと明らかになるという後半の展開には求心力があり、役者陣の演技の上手さも相まって目が惹きつけられた。
結局日浅の正体は藪の中、彼の人間性の判断は観客に委ねる、というソリッドな読後感も悪くない。
ただ。ただねぇ…。
「人見る時は影の一番濃いとこ見んだよ」という日浅の言葉もあることだし、この映画の悪いところにも目をやってみたいと思う。
歯に衣着せたところでしょうがないのでスパッというが、この映画クッッッッッソつまんねぇ🫵!!!!!
開始1分で「あっ、これは修行映画だな…」と覚悟を決めたのだが、その予想を裏切らないつまらなさだった。
・登場人物がみんな鬱病かというくらい暗い
・ボソボソ喋りすぎて何言ってんだかよくわからん
・辛気臭くて鈍重な物語運び
・胃もたれしそうな主人公の泣き顔アップ
という、邦画のクソ要素が全て詰まった邦画満貫全席。全然物語が前に進まないにも拘らず134分という長尺。勘弁してください…。
クライマックス、綾野剛がなんか契約書みたいなもん見て泣くんだけど、その意味が全然わからな過ぎて「😵💫?」ってなっちゃった。もう一度見返せば意味がわかるのかも知れないけど、つまらなすぎるのでそんな気はさらさら起きない。
超退屈しながらも頑張って最後まで観たのにっ💦もっとサービスしてくれよ!!
岩手県の観光PR映像と前述したが、はっきり言ってこの映画を観て岩手県に行きたいとは思えない。だって辛気臭すぎるもん。
松田龍平がだんだんと盛岡人として染まっていく姿には恐怖すら覚えたので、これは見様によっては『八つ墓村』的な田舎ホラーと捉えることが出来るかも知れない。
少なくともこの映画を観て「盛岡に移住したい!!」と思う人は一人もいないだろう。テレビ岩手の企画なのにそれで良いのかねぇ。
前半のクッソ長い綾野松田のBL展開をもう少し削って、日浅の謎に迫る後半のサスペンス部分をもっと膨らまして描いていれば面白くなったかも。
純文学=退屈みたいなイメージが定着してるし、大友監督もそう捉えているのかも知れないが、文学部卒の自分から言わせて貰えば、優れた純文学って面白いのだっ!!
漱石だって太宰だって春樹だって谷崎だって乱歩だって、ちゃんとエンタメ的な面白さが作品に込められているからこそ未だに読み継がれている。
多分、この物語も原作は面白いのだろう(読んでないからわかんないけど)。文学を映画にするのは歓迎だが、それをするならもう少し純文学のエンタメ的面白さの部分にも目をやってほしい。