「元気のGは 始まりのG! 今後への期待が高まる、堂々の第一部!」劇場版 Gのレコンギスタ I 行け!コア・ファイター たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
元気のGは 始まりのG! 今後への期待が高まる、堂々の第一部!
『ガンダム』シリーズの生みの親、富野由悠季が手がけたTVアニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』(2014〜2015)を、新規カットを加えた再編集版として劇場用アニメーション化。全5部作の予定で、本作はその第1作にあたる。
舞台は「宇宙世紀」が遠い過去となった時代、「リギルド・センチュリー」。
「キャピタル・タワー」と呼ばれる、宇宙と地球を繋ぐ長距離エレベーターを護衛する組織「キャピタル・ガード」の候補生ベルリと宇宙海賊アイーダの出会い、そして謎のMS「G-セルフ」をめぐる「キャピタル・アーミィ」と「アメリア国」との戦いが描かれる。
正直本作への期待は薄かった。というのも、TVアニメ版の『Gレコ』には「意味が分からない」「詰め込みすぎ」などといった悪評がついて回っていたから。
そんな作品の総集編なんて面白いわけないでしょ〜、と思っていたのだが、YouTubeの『ガンダムチャンネル』で無料配信されたのを機に、今回鑑賞してみました!
ちなみに自分は特別なガンダムファンというわけではない。TVアニメ版は未鑑賞。
一応オタクの基礎教養として、ファーストのTV版と劇場版は鑑賞済み。他にも『ポケ戦』や『0083』、『08小隊』『IGLOO』『ORIGIN』、それに『サンダーボルト』も観たような気がする。
こうやって書き出してみると、一年戦争に関わるアニメはそれなりに観ているなぁ。
『逆シャア』すら観ていないにわかが、果たしてこの作品を観ても良いのだろうか、とも思ったが、よくよく本作のタイトルを見てみると、TVアニメ版には付いていた「ガンダム」という言葉が取り外されている。
富野監督は本作を「小学校の中学年や、中学生に観て欲しい」と述べている。
これはつまり、本作のターゲットはこれまでずっと『ガンダム』を観続けて来ている大人ではないということ。ガンダム世代ではない子供たちにも観てもらえるよう、強力なネームバリューを持つ「ガンダム」という単語をタイトルから取り払っているところに、富野由悠季監督の矜持を感じる。
まぁ要するに、本シリーズは『ガンダム』シリーズであって『ガンダム』シリーズではない、と言ったところなのでしょう。
ということで「にわかファンでも本作を鑑賞しても良いんだ!」と自分で自分を納得させて鑑賞!
本作は全5部作のうちの第1作なので、まだまだ物語の加速段階というところ。
大きな戦闘は起こらないし、キャラクターの人物像や関係性、世界設定など、未だに掴めていないところは多い。
本作だけで『Gレコ』を良かっただの悪かっただのと評価することはもちろん出来ないが、この第1作は大きな物語の「起」の役割は充分に果たしており、観客の興味を続編へと持続させる効果は存分にあると言っても良いでしょう。
物語の途中から始まったかのような幕開きには面を喰らった。その後もよく分からない単語が続出するし、世界観の説明も殆どないので、前半はついて行くのでやっと。
とはいえ、中盤辺りから「リギルド・センチュリー」を取り巻く世界情勢や、それぞれのキャラクターの立ち位置をそれなりに説明してくれるので、物語から置いてきぼりにされることはない。
『エウレカセブン』も手掛けていた吉田健一によるキャラデザは、あまり『ガンダム』らしくないなぁと思っていた。しかし、動き出したキャラクターたちを見た瞬間に印象は変わる。元気いっぱいな若者たちが跳ね回る、陽気な作風な本作にはこのキャラデザはピッタリ!
ベルリとアイーダの関係は中々に重いものであるのだが、明るいキャラクターデザインのおかげで辛気臭さはなく、爽やかでとっつきやすいアニメとなっている。
演劇のような激情的で大袈裟な芝居や独特のセリフ、いわゆる「トミノ節」は本作でも現在。
これは正直ある程度のリテラシーを持っていないとついて行けないかもしれない。
とはいえ、このほかのアニメでは味わえない臭みこそが富野由悠季アニメの面白さ!この強烈なクセこそが、宮崎駿や庵野秀明にはない富野由悠季のチャーミングさであり美味みなのです🍽😋🍽
TVアニメの総集編ということで、ぶつ切り感のある不細工な作品かと思っていましたが、全くそういう感じはありませんでした。冒頭こそ違和感がありましたが、総評としては元から劇場用に作られていたかのような滑らかさを感じる、非常に丁寧な作品だと思います。
作画のクオリティも申し分なく、バトルシーンの臨場感には胸が躍ります。
お偉いさんの息子とそんな少年に世話を焼く少女、素顔がバレバレのマスク男、ラライヤというララァを思わせる名前と見た目の少女など、ファーストのセルフパロディ的なキャラクター設定には思わずニヤリ😏
ガンダム世代を突き放すような発言をしておきながら、ちゃんとその世代を満足させようとする富野監督のツンデレぶりが可愛い💕
アニメ界の至宝、富野由悠季御大が手がける劇場用アニメシリーズ。観てみる価値はありますぜ!