ふたりの女王 メアリーとエリザベスのレビュー・感想・評価
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現在のイギリスや王室の礎
この二人の女王は現在のイギリスや、英国王室の礎だ。
だが、この物語は、イギリスの歴史上、最大の悲劇かもしれないと改めて思った。
この頃、大陸欧州は、大航海時代やルネサンスで、経済的にも文化的にも繁栄し、イングランドもスコットランドも大陸に出遅れていた。
大航海時代の主役は、ポルトガルや、スペイン、オランダで、文化的にはイタリアやフランスがリードし、イングランドとスコットランドは長く続いた内乱で疲弊していたのだ。
しかし、前にも述べたように、この二人の女王は、現在のイギリスの礎となった。
映画では、メアリー スチュアートはフランスで長年過ごし、社交的で聡明、策略家のように描かれる一方、エリザベスは様々な内政に内向きで、花柄の額に拘る姿など必要以上に頑ななように映る。
ただ、エリザベスは庶子ということや、容姿に大きなコンプレックスを抱えていたこともあるかもしれないが、政治的に実は、自分の周りの地固めを最優先していたのではないかと思う。
そして、長い停滞の時を経て、エリザベスはついに、メアリー スチュアートの処刑を決断し、エリザベスが庶子で女王には不適切として幾度となく内政に干渉し、メアリー スチュアートを正統と主張し続けていたスペインと対峙し、当時、無敵とされていたスペイン艦隊を破り、海洋国家 大英帝国への道を開くことになる。
その後、ピューリタン革命など不安定な時代がありつつも、イギリスの繁栄は、産業革命を経て周知の事だ。
そして、エリザベスはメアリー スチュアートの子供、ジェームズを後継とし、王室の系統を守り、イングランドとスコットランドは一人の国王の下に結ばれ、現在の英国王室に繋がっているのだ。
エリザベスは、国内を盤石なものにし、その後の未来のイギリスの姿を、ビジョンを見ていたのだろうか。
その懐の深さは、計り知れない。
ところで、英語のタイトルは、メアリー、 クィーン オブ スコッツだが、どんな意図があるのだろうと、考えてしまう。
もしかしたら、エリザベスは、メアリーに欧州大陸の国々の危うさを見て、反面教師にしていたというメッセージもあって、映画のタイトルにしたのだろうか。
いや、ある種のコンプレックスや敵愾心を抱えつつも、子供を産んだ女性の幸福をメアリーに感じ、憧れを抱いていたというエリザベスの悲しみのパラドックスの象徴としてタイトルにしたのではないか。エリザベスは自分は男になったのだと言っていたではないか。
正統と庶子、聡明と愚直、寛容と慎重、カトリックとプロテスタント、異なる種類の孤独、そして容姿など対照的な、この二人が同じ時代に生きたことは、悲劇かもしれない。
しかし、この二人の女王が同時代に生まれたからこそ、現在のイギリスがあり、ひいては、現代の世界体制にも繋がって影響していると考えると、ちょっとゾクゾクしてしまう。
王室はスキャンダルまみれ
16世紀、スコットランドの女王メアリー・スチュアートとイングランド女王のエリザベスⅠ世の物語。
主にメアリー視点で進み、メアリーが19歳でスコットランドに戻り、女王の座についたところから、イングランドで処刑されるまでを描いていました。
メアリー役のシアーシャ・ローナンも、エリザベス役のマーゴット・ロビーも、すさまじい演技力。
あと、残っている肖像画からすると、シアーシャがそっくりすぎて不気味レベル。
史実をベースにエンタメに振り、ふたりとも悲劇の女王扱いする作劇は、なんだかNHK大河ドラマっぽかったです。
いつの世も、権勢欲に振り回されて、政治家や王族というのは破滅していくのだなぁ、と思わせてくれます。
出てくる男が、どいつもこいつもクズなのに苦笑いしつつ。
王室って長年スキャンダルしかないんだなぁ…と思わせてくれて。
ダイアナ妃を思い出したりして。
実にイギリスらしい、皮肉まみれな映画でしたよ。
この時代の歴史が好きor少し知識があるなら、観ても損はないと思います。
全然詳しくないなら、人間関係や血筋、宗教対立が複雑すぎて分かりにくく、避けた方が賢明かも。
酷だな
わたしは納得しない。
主権を有していても、望まれるのは血統の承継だけ。
その孤独を共有できるのは、同じ立場にあるエリザベスだけ。
これは本当にいいテーマだと思う。でも、この作品は、そのテーマを描ききれていない。シアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビーという人気と実力のある女優の出演作だけに残念だった。
本作のメアリ・スチュアートは、ブリテン島の統一によって、平和をもたらすことを期している。そのために、エリザベスに自らへの後継指名を要求している。エリザベスにも別の思惑がある。メアリとエリザベスの往復書簡に関する著作を原作としていることから、書簡のやりとりを通じて、社会に対して責任を負う者の成長が描かれるものと思っていた。そうはならなかった。
メアリは、スコットランドを混乱させるだけで何もしないのである。最初の配偶者の選択は、彼の野心に気づかなかったメアリの明らかなミスだ。混乱を生じさせることが間違いないのに、宮廷の宗教指導者を野に放ち、それが失脚の原因となる。とにかく人の助言を聞かない。
メアリはスコットランド女王であり、その地に住まう民に責任を負う者だ。彼女の評価はそれが前提となるべきで、旧態依然とした男性社会へのプロテストを描きたかったのだとしたら、この演出ではわたしは納得できない。
史実を逸脱しても、「女王陛下のお気に入り」は、絶対権力者の孤独を描いてみせた。史実を言い訳にすることはできない。
もっと観たかった
【二人の聡明なイングランド・スコットランド女王と愚かな男達を描いた作品・・。】
所詮男は種馬さ・・・ふっ。
この手の映画は鑑賞後に必ずwikiチェック。エリザベスが天然痘に罹っていた事実も『エリザベス』、『エリザベス:ゴールデンエイジ』を見ているにも関わらず、知らなかった(忘れてるだけか?)。とりあえず、メアリー1世というイングランド女王もいたため、調べたのに早速混乱してしまった。
同じ島、同じヘンリー7世の血を引く二人の女王メアリーとエリザベス。スコットランドに帰ってきたメアリーはエリザベスの王位を認めるもイングランドの王位継承権を主張。あなたが死んだら私が女王だからね!といったことだろうか、カトリックとプロテスタントという対立する宗教の問題も徐々に薄れていったような気がする。
とにかく世継ぎを産んでしまったもん勝ち!と思ったような振る舞い。エリザベスが天然痘に罹ったとか、大使や手紙を通じて宮廷同士の情報戦が展開する。政略結婚である再婚には気が進まなかったけど、同じスチュアート家の傍系のダーンリー卿ヘンリーとの結婚話がまとまる。しかし、その結婚生活もドロドロ。寵愛していた音楽家リッチオの存在もバイセクシャルっぽい謎めいたものがあり、出産したジェームズもヘンリーの子かどうか怪しいまま・・・
しかし、リッチオも殺害、妊娠判明後にヘンリーも暗殺。馬の親子のカットが意味深げに挿入され、ヘンリーが種馬として扱われなかったことに男として悲しくなるのです。こんな、ふたりの女王の確執どころではない、ドロドロしたお家騒動がスコットランドで起こっていたのだ。
終盤、なんだかメアリー自身の命を賭してまで息子に王位を与えたい気持ちが伝わってきた。斬首されるシーンも真っ赤な衣装に気高さが感じられ、スーッと英国王朝に溶け込んでしまうかのような清々しさとか没入感があった。最後のテロップによって息子ジェームズがエリザベスの死後両国の王となり、スチュアート朝が100年以上続くという言葉でなぜだかホッとした・・・
私の気持ちを知るのは、もう一人の女王だけ
しみじみ
ステレオタイプなメアリーとエリザベスのドロドロの確執劇を想像していたら真逆なお話。ラスト2人が初めて顔を合わせるシーンはなんとも言葉にし難い感動で涙しました。
生れながらの女王ゆえに女王であることが当たり前過ぎてその座にこだわり続け戦い続けるメアリー、争いのない世界を望む優しい人でありながら女王であり続けるために女を捨てて生きる決断をするエリザベス。いずれも切ないけれども芯の通った生き方が凛々しく美しく、また隠し切れない女の弱さが、抱きしめて支えてあげたくなるくらい愛おしい。
「女王」の哀しさを描いたこの作品は、男性より断然女性にお薦めします。
予想以上に掴まれた…
期待通り
女の王としての孤独に奮闘した者たち
ジャパンプレミアで鑑賞。スコットランドとイングランドの女王たちの信仰と権力闘争だが、同時に「女の王」であることの孤独を強烈に描き出している傑作。舞台は16世紀だが、今描かれても尚共感を呼び起こす。主演二人の演技、圧巻だった。
シアーシャ・ローナン、迫真の演技!威厳と優しさを兼ね備えている。あの時代ではまだ理解されないであろう人を受け入れ、自分を裏切った者にさえ愛情を注ぐ人であると同時に、王族としての誇りのためならいくらでも苛烈になる女王だった。ずっとギラギラ漲らせているのに、ちゃんと臣下や民には優しい目線を向ける。そのメリハリが素晴らしい。そして最後の衣裳!風格の違い、自身の主張を最後まで貫き通していた。
対するマーゴット・ロビーも凄まじく…君臨する、という言葉が相応しい立ち振る舞いに身震いする。攻撃は最大の防御という言葉を思い出すような人だった。ほしいものはどうしても手に入らず、真に分かち合える人もおらず、それでも君臨し続けた。
この二人を扱った話は以前ミュージカルで観ていたが、まるで違った印象を受けた。そちらにはオリジナルキャラクターがいて、女王でも人間なのだという面が強調されていた。けれどこの映画は人間であることも描いているのに、王であり続けた者たちの話だった。
スコットランドvsイングランドの話ではあるが、ふたりの女王は男社会の中で闘う点では同じである。女同士の闘いではない。そこを描き出していることが、重要な意味を持つ映画だ。フェミニズムに通じていて、今公開されるのに相応しい作品である。
男社会の中で戦ったふたりの女王
時代に翻弄されたふたりの女王を、ふたりの才能あふれる若手女優が演じるのを楽しむ作品だった
エリザベス女王とは、かつてケイト・ブランシェットも演じたヴァージン・クイーンこと、エリザベス1世
そのエリザベス1世を、マーゴット・ロビーが演じている
あの時代、16世紀のスコットランドを統治していたのが、シアーシャ・ローナン演じる女王メアリーだった
序盤は、そのメアリーがイギリスの王位継承権を持っていることを主張して、イギリスも自分のものにしようとするところから始まる
その時は、野心溢れる若い女王が、のし上がっていく話なのかな…と思っていたのだけど、次第に旗色が悪くなっていく
一方で、エリザベスはそんな美貌とカリスマに溢れたメアリーを横目で見ながら嫉妬している
この映画の見所は、そんなふたりの対立にある
私としては、あのエリザベス女王の時代に、スコットランドにメアリー女王がいたなんて知らなくて
ほぉーと思いながら見ていた
しかし、時代は16世紀、いくら女王に力があるといっても、よく思わない男性たちはいくらでもいるわけで、様々な陰謀が仕掛けられる
メアリーも負けじと戦うわけだけれど…
この映画の中で描かれていることが全てではないらしく、虚実を織り交ぜて描かれているらしい
なので、演出もあるとは思うけど、火花散るふたりの女王の対立は、華やかで、美しく、それでいて切なさ感じられるものだった
あぁ、なんて酷い時代に女王になってしまったふたりなんだと思わずにはいられなかった
そして、何より、シアーシャ・ローナンと、マーゴット・ロビーのふたりを観ているだけで、十分楽しめた作品だった
今年のアカデミー賞では、衣装デザイン賞と、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされていて、確かに、とても個性的で美しいデザインだった
これぞ、女同士の戦いぞ!
女同士の政治バトルにハラハラドキドキ。
エリザベスVSメアリー。
イングランド対スコットランドの火花がバチバチと闘志を燃やしています。
一度も顔を見たことのない女王同士が、手紙のやり取り一つで、互いの腹の底を探りあっていく…。
妬み嫉みのドロドロしたものが、文字を通して互いの心をかき乱します。
女って恐ろしい…。
策士はどっちか?
騙されるのはどちらか?
政治と皇族の複雑な人間関係が、もつれた糸のように、グチャグチャしていました。
この静かなるバトルを繰り広げるのは、私の大大大好きなシャーシャローナンちゃん。
彼女の破天荒な役柄には毎度のこと驚かされますが、今回も見事に彼女がこの時代の女性の心をかき乱してくれました(笑)
彼女の笑顔や行動が、周りの大人たちを巻き込んでいく姿は実に滑稽。
あの傲慢なエリザベス女王でさえ、彼女のエキセントリックな行動にドギマギさせられていました。
同じ女性として協力し合う道もあったのかもしれませんが、メアリーの美しさ、母性、気品に恐れ慄く気持ちも分からなくはないかも…。
イギリスでは、たくさんの人を犠牲にしてのし上がっていくのが国家を守るためには必要なのでしょう。
エリザベス女王が国家と結婚したという言葉があるように、我が身を犠牲にして築いていった歴史がここにあります。
妥協や打算は許されず、成功も失敗も紙一重の世界。
日々の生活に危機感を常に持っていた二人だからこそ、最後の結末は致し方なかったと言えるのかもしれません…。
悲しいラストではありましたが、シャーシャローナンちゃんの涙が、息子の未来を光あるものにしてくれることを願いたい…。
今回、試写会のゲストに映画コメンテーターの赤ペン瀧川さんが登場してくださいました。
彼の斬新な切り口で、難しかったイギリスの歴史や、複雑な政治の部分を、とても分かりやすく解説してくださいました。
この映画を一言で表すなら、
「スケバン戦国時代」なのだそうです(笑)
女子同士の熱いバトルを学園ドラマに置き換えて、面白おかしく語ってくれた、楽しい時間となりました。
ありがとうございました(笑)
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