「危機管理とは・・」Fukushima 50 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
危機管理とは・・
未曽有の原子力事故に携わった現場の方々の必死の努力には頭が下がるが格納容器破損の最悪の事態を人為的に防げたのは1、3号機のベントまでである。
そもそも緊急事態マニュアルにもSBO(全電源喪失)は想定されておらず非常用冷却のイソコン作動時の排気口の蒸気確認すら全員が未経験、電源車が来ても電圧が合わず使えない、消防車による注水も配管の把握ができておらず炉心に水が届かなかったという失態。
2号機はベントできず、圧力低下は容器の蓋のボルトがたまたま緩んだことによる漏れと見られている、ただ容器から直接放射性物質が漏れた為ベントとは桁違いの汚染をもたらすことになった。次のクライシスは4号機の使用済み燃料プールの大量の燃料の熱崩壊だが、すぐに露出しなかったのは建屋の水素爆発で貯水ピット、原子炉ウェルとプールの仕切りが割れてプールに水が流れた為であるが炉内の隔壁交換工事が遅れていたため原子炉ウェルの水抜きをしていなかったという偶然に救われた。むしろ建屋が損壊したことで外部からの注水ができ最悪の事態を免れた。確かに自然災害が主因だが対応の不備は人災なのである。
先月の福島の地震では肝を冷やした、幸い損傷は無かったようだが地震計の故障の放置などのニュースを聞くと疑心暗鬼に苛まされる。未だ廃炉までの道筋すら見えないのが現実だ。これだけの災害大国でありながら危機管理の意識、能力に欠けている日本人の資質、風潮は何なのだろう。
あの未曽有の事故を風化させないための映画化の功績は買うし現実的に想定が不備だった中で精一杯の努力を尽くした現場の人々に敬意と謝意を払う気持ちは変わらないが内容がややドラマチックに寄せられ感動物語風に作られてしまう映画人のメンタリティには背筋に寒いものを感じざるをえない。個人的には亡き大杉漣さんが吉田所長を演じたNHKスペシャルの再現ドラマの方が事象に正確で学ぶべきことも多く印象深かった。