「ゴジラ哲学」ゴジラvsコング 終焉怪獣さんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラ哲学
ゴジラとは哲学である
ゴジラ(1954)からゴジラSPまで見続けている者です。
ゴジラSPの怒濤のクライマックスの熱が冷めない中に公開とはゴジラ冥利に尽きます。
以前ならばゴジラに対して「好き」「愛している」と云う感情を振り撒いていたゴジラファンでしたが、今は違います。
ゴジラを信仰し、崇拝するマイケル・ドハティ教祖による「Godzilla: King of the Monsters」を鑑賞して以来、神(ゴジラ)に対する想いが信仰だった事に気が付きました。
故に「Godzilla: King of the Monsters」を劇場にて21回リピートしました。
あれは神(ゴジラ)を賛美した宗教映画なのです。
冒頭より早々に自分語り、失礼しました。
長らく待ち続けた「ゴジラVSコング」ですが、公開前は不安の方が強かったです。
本作を持ち上げる為の露骨な米国での評論家レビュー、USA生まれ故にコング推しのPV、そしてアダム・ウィンガードのコング推し疑惑等々。
しかし脚本に親愛なるマイケル・ドハティが参加されていたのでゴジラを蔑ろにする作品な訳が無いと疑念を振り払い鑑賞。
結果、ゴジラファン、コングファンどちらにも配慮したバランスの取れた良い作品でした。
【物語】
国内外の評論家達が語るように我々が観たい映像を良く理解している構成。
無論、過去のモンスターバースシリーズとて私達怪獣ヲタクの渇望を充分に満たしてくれた作品でした。
空母上による海戦、ネオン輝く都市での戦闘とシチュエーションも良く、ゴジラの戦闘はいずれも手に汗握るシーンの連続で飽きを感じさせないと云うスタッフの気概がありました。
【音楽】
前作、ベア・マクレアリーが手掛けた音楽が素晴らしく伊福部昭先生をリスペクトし、アレンジを加えた「ゴジラのテーマ」や般若心経を呪詛とした「ギドラのテーマ」のインパクトは超えられなかった印象。
ですが、その場面を思い出させてくれるだけの音楽であった事は事実。
今回もサントラ購入確定です。
【登場人物】
前作同様に人間は蚊帳の外なのが好印象。
どれだけ立ち回っても神々の足元で迷走するのが人間。
ドラマとは人間だけの特権ではない。
怪獣にもドラマがあり、哲学がある。
私達はそこに惹かれるのだから。
【コング】
今作はコングを主軸に物語が進行。
怪獣映画の命題たる「怪獣だけではドラマ性が成り立たない」件(上記に記したように私はこの考え方には賛同はしていない)をクリア出来る点がコングの利点。
類人猿故に人間同様の表情で観客に共感を生む。
更には髑髏島の先住民イーウィス族出身の少女ジアと「手話」による意思疎通を図れる強みもある。
それ故にどうしてもコングや人間が起点となるのは致し方ない。
髑髏島の巨神時代から成長したとは言え、神の化身たるゴジラに対して純粋な肉弾戦と機動力しかないコングは、今作オリジナルの武器を使用。
【ゴジラ】
我らが怪獣王にして神たる存在。
前作のドラマ性を感じさせるゴジラの表現は封印され、東宝が依頼した「ゴジラに感情を持たせないで」の通りに描かれている。
私はこの意見に賛同しており、人間の感情と怪獣の感情とは別のベクトルと考えています。
かつてドハティ監督が記者のインタビューに答えた「神に人間を道義を持ち込むのかい?」が、それを表していると思います。
人間の概念・観念を超越するからこそのゴジラ。
前作のドハティ監督の「ヒーロー性」を持つゴジラも超絶好きですが、こちらの意図を読み取れないゴジラ像も超絶好きです!
相変わらず熱線の演出が神懸かっている。
【メカゴジラ】
キングギドラに続き、待望のメカゴジラ。
無骨なデザインでしたが、アクティブな動きによる戦闘は圧巻。
【総評】
私的にゴジラへの敬意に溢れていた「Godzilla: King of the Monsters」を超えられなかった印象ですが、人類文明への攻撃は我々、日本人に馴染み深いゴジラ像。
その部分を観れたのは本当に良かったです。
星1~4の意見も理解出来ますし、共感も出来ます。
しかし私は星5以外の選択肢は有り得なかった。
ハリウッドの技術で表現された美しく神々しいゴジラが人類文明へ敵対行動をし、破壊の限りを尽くす...これを描いてくれただけで感謝しかない。
私も年間100本以上の映画を映画館にて鑑賞しています。
全てのジャンルの映画を偏見を持たずに観れるのも人生で初めて映画館で鑑賞した「ゴジラVSデストロイア」のお陰です。
ゴジラと出会ったお陰で物理学や生物学、民俗学等の多様な学術研究を好きになれました。
多くの有識者や知識人、専門家がゴジラを基点とする書籍を執筆するのも頷けます。
ゴジラについて語る事は日本の歴史・民族史を語る事と同義と言っても過言ではないです。
人間性の向上、哲学の構築にゴジラは欠かせない存在。
これからも世界中で新たなゴジラ作品が生まれる事をお祈り致します。
新たな神(ゴジラ)と出会う度に私は更に成長して行ける。