「私と怪獣プロレス映画」ゴジラvsコング シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
私と怪獣プロレス映画
“三つ子の魂百まで”とはよく言ったもので、子供の時に夢中になったものは歳をとっても心が疼き搔き立ててくれるようです。
しかし半世紀以上前の作品を今観ると、よくもあんな子供騙しのチープな特撮と着ぐるみで夢中になったものだとつくづく思ってしまいますが、ゴジラ初公開時は非常に斬新なジャンルとして子供だけでなく大人もそのアイデアとテーマに脅かされたのです。
そして、非常に映画的魅力に溢れていたからこそ、今でもバージョンアップされながらどんどん作り続けられるのだと思います。
更に映画はCGという強力な武器を得て、正直これまでは非常に残念に思っていた特撮のリアルさまで手に入れ、当時子供だった大人の夢をどんどん叶えてくれ進化し発展して行くのが嬉しいです。
正直言って、もうこの歳になって怪獣映画に対して期待する事はビジュアルしかないのですよ。
元々この種の作品の内容なんて、今までにだって大人が唸る様な作品は数えるほどもなかったし、私は内容に期待はしていません。
以前『シン・ゴジラ』の感想の中で私は「ゴジラ映画には1作目とそれ以外の作品との2種類しかない」という事を言いましたが、1作目と『シン・ゴジラ』は全世代向けであり、その他は子供向けと捉えています。
そのパターンを混同して見分けが付かない人や、このジャンルに内容を第一優先に求める人は、最初から観に行かない方が賢明だし、言い換えれば“子供心”というスイッチのない成人は観に行くべきではありません。
多くの成人がこの種の作品に何を期待して観に行くのかは分かりませんが、観終わってから「内容がない」なんて感想はご法度だとも思っています。
そう言う私も怪獣映画に対しては“怪獣プロレス”が主流になった十代前半から直ぐに卒業していました。
しかし、昨今のハリウッド映画では『トランスフォーマー』シリーズや『パシフィク・リム』などのド迫力の“怪獣(巨大ロボット)プロレス”を扱った作品の成功例が既にあり、今の映像技術があるからこそ、今回のハリウッド製ゴジラバースの場合“怪獣プロレス”に徹して貰い、それに一番期待して観ています。
特に今回の隠し玉は絶対に着ぐるみではダメな奴だったし…、
ハリウッド映画業界というのは、新しい技術やエンタテインメントに関しては強いプライドと面子を持って勝負してきますから、そこだけに関しては絶対に楽しめること間違いありません。(逆に日本映画の場合、今怪獣映画を作るなら、そこが一番弱い部分でもあるので、内容で勝負するしかないのですが…)
だからこそ、そこに興味がない人が観ても仕方がない作品とも言えます。
話を戻して、今までのゴジラバースの“怪獣プロレス”部分については、夜のシーンが多く迫力はあっても非常に見づらく分かり難いという欠点がありましたが、本作は夜や地底王国にも関わらず明るくて見やすい見やすい(笑)
更に、今までの怪獣達と違いコングは飛行したり光線などの武器も無く、唯々殴る・蹴る・投げる・掴む・引き千切るという肉体のみを使った闘いとなるので、まさに“怪獣プロレス”に相応しい肉弾戦が出来る貴重なキャラであり、極端な話、本作の見どころは其処だけと言っても過言ではない作品になっていました。
まあ日本人としては、いつの間にか主役がゴジラからコングになってしまっていたので、これがゴジラバースの最終回だとすると、ちょっと寂しいという気持ちも残りましたが、これ以上“怪獣プロレス”を続けられても飽きが来るだけなので、丁度良い潮時だとも思います。