「エメゴジとアニゴジの悪いところどり」ゴジラvsコング サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
エメゴジとアニゴジの悪いところどり
前作のKOMは最初から最後までドンパチやっていて、vsシリーズの極地を観た気がして楽しめた。人間側のドラマだか妄想だかも、ぶっ飛びすぎていたから悪くはなかった。
しかし今作はどうだ。肝心のゴジラvsコングは120分のうち最後の40分程度。それまでは陰謀論と地球空洞論と謎エネルギーを求めるこてこての悪役たちの織りなすストーリーに耐えなければならない。悪いかどうかでいったら相当悪かった。
なぜか。突っ込みどころが多すぎるからだ。まずは設定が突然、それもたくさん生えてきた点。特筆したいのはコングとゴジラが古代からの永遠のライバルであるという設定。これが冒頭でいきなり明かされる。死者の口が開いた!や死の女王ヒミコと同じくらい驚いてしまった。つまり、呆れてしまった。
そして、総合してしまうが、出てくるSFっぽい言葉…いやそれどころか科学っぽい言葉さえ、登場人物の言葉を借りた実況解説にしか見えなかった。それで無理やり話を進めていたからだ。特にメカゴジラ関連。見ただけで生体スーパーコンピュータと分かるとか衛星とリンクしているとかアルコールでコンピュータが火を噴くとか。科学の知識がちゃおやコロコロレベル。
そういった細かな突っ込みどころに加えて、陰謀論や疑似科学が真面目に描かれるのだ。陰謀論で始まる大企業の悪事追及がトンデモどころか一貫して正しく描かれたとしても、それで主人公を応援できるだろうか。
地球空洞論もそうだ。これまでは言及されるにとどまっていたが、実際に描かれてしかも話の中核になるのは中々キツイ。空洞論周りのSFチックな話も全くアクセントになっていない。ヒーヴは何のために出てきたんだ。
そして何よりゴジラの描かれ方が不満だ。すっかり人類の救世主となってしまったゴジラは神として崇められている。だが、そこには畏怖も敬意もない。単なる便利で大きな用心棒だ。当然、災害や破壊の象徴としての姿もない。この映画で暴れていたのは、エメリッヒがマグロ大好きトカゲに堕とした、あの映画のパチモンゴジラだった。
まだまだ不満はあるが、いいところもある。まずはコングに武器を持たせたところ。あれのおかげでコングがゴジラに勝つことに説得力が出たので、そこはよかった。メカゴジラを破壊しつくした連撃も中々の迫力。
次に、そして最後だが、しかし最高だったが、ネオンビル群の中でコングとゴジラがバチバチに殴り合いけん制しあうシーンは大スクリーンで観た価値があった。熱線を吐こうとするゴジラ。それに対抗するは拳と斧。殴り殴られ、ビル群はすっかり廃墟に。
これこそ大怪獣映画。それまでの80分ほどを我慢できるのであればオススメです。