劇場公開日 2019年3月29日

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「報道の現状」記者たち 衝撃と畏怖の真実 ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0報道の現状

2019年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

原題は「Shock and Awe(衝撃と畏怖)」で、イラク戦争を開始した
空爆の作戦名です。
邦題は「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」です。
邦題の方が映画をイメージしやすいです。

「多様で独立した自由なメディアこそ米国の民主主義にとって重要だ」
というビル・モイヤーズの言葉で始まります。
ビル・モイヤーズは、1965年-1966年に、リンドン・ベインズ・ジョンソン
(LBJ)米国大統領のホワイトハウス報道官を務めた人物です。

「もし他のメディアが政府の広報に成り下がりたいならさせておけ。
政府が何か言ったら必ずこう問え”それは真実か”」という言葉が
今の日本も響くと感じました。

「ニューヨーク・タイムズ」、「ワシントン・ポスト」だけが権力に
屈することなく、ペンタゴン・ペーパーズを報道し始めました。
「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」を鑑賞すると理解できます。
報道されなければ、どうなっていたのでしょうか?

「ワシントン・ポスト」だけが権力に屈することなく、
ウォーター・ゲート事件を報道し始めました。
「大統領の陰謀」を鑑賞すると理解できます。
報道されなければ、どうなっていたのでしょうか?

「ガーディアン」、「ワシントン・ポスト」だけが権力に屈することなく、
スノーデン事件を報道し始めました。
「シチズンフォー スノーデンの暴露」、「スノーデン」を鑑賞すると
理解できます。
報道されなければ、どうなっていたのでしょうか?

他のメディアも追従して、政府を追及し、真実は明らかになりました。

ナイト・リッダー紙という新聞社が、「イラク政府が大量破壊兵器を所有
していない」という真実を報道しようとしましたが、報道できずに、
他のメディア、もちろん日本のメディアも、米国政府の主張である
「イラク政府が大量破壊兵器を所有している」と報道し、イラク戦争が
起き、戦死者は5万人以上、負傷者は10万人以上、民間の死亡者数は
10万人から50万人となりました。

米国政府のイラクに大量破壊兵器があるという嘘の主張に
世界でいち早く支持したのは、自民党政権です。
日本もイラク戦争に参加しました。

米国政府は、嘘を認めました。
自民党政権では、嘘をまだ認めていません。
民主党政権で、2012年、外務省が検証結果のうち4ページだけを発表した
そうです。
日本の報道機関は、外務省の検証結果を全く追及していません。
だから私は検証結果を知りません。

この映画は、2001年から2004年までの米国の情勢を説明しているので、
物語についていくのは、大変です。

プレイム事件を描いた「フェア・ゲーム」を鑑賞しておくと、背景が
理解できます。

なぜ、イラク政権が大量破壊兵器を所有していると疑われたのは
石油食料交換プログラムにより、イラク大統領のサダム・フセインが、
1兆円を超える資金を得ていたことも理由の1つだと思います。
「バクダッド・スキャンダル」を鑑賞しておくと、背景が理解できます。

米国同時多発テロを描いた「ユナイテッド93」、「華氏911」、
「ワールド・トレード・センター」、アフガニスタン戦争を描いた
「ホース・ソルジャー」、「ローン・サバイバー」、
イラク戦争を描いた、「グリーン・ゾーン」、「告発のとき」、
「アメリカン・スナイパー」、「ハート・ロッカー」、
ウサマ・ビン・ラディンの殺害を描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」
を鑑賞し、理解できるくらいでないと、物語についていけません。

籾井勝人NHK会長は、「日本の立場を国際放送で明確に発信していく、
国際放送はそういうもの。政府が『右』と言っているのに我々が『左』
と言うわけにはいかない」と答えています。
NHK政治部記者兼解説委員の岩田明子は、「取材、報道をする上で
最も重要視している事は何か」と尋ねられて、「国益にかなうこと」
と答えています。
政府の広報に成り下がりたNHKは、大本営発表を垂れ流しているだけで、
存在価値はなく、受信料を支払う気になりません。

日本がイラク戦争を支持し、自衛隊をイラクに派遣したのは、NHKが
「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」
からであり、「国益にかなうこと」として報道したからだということです。

政府の広報に成り下がりた他のテレビは観ませんし、新聞も読みません。
ピエール瀧容疑者の「麻雀放浪記2020」を公開するような邦画も鑑賞しません。
洋画は、調査報道の役割を担っていると感じているので、鑑賞する価値
があります。

2003年3月22日、世界中でイラク戦争に対するデモが起きました。
ドイツ各地で計20万人、イタリアで15万人、英気にで50万人、
フランスで7万人、ギリシャで10万人、米国で10万人など計60カ国、
600都市で約1000万人が参加し、60年代のベトナム戦争時を
上回る規模のデモになりました。
日本は、大きなデモにはなりませんでした。

パンフレットは、よくできているのいるので、映画を理解したい人には
お勧めできます。

パンフレットによると、米国でも英国でも、メディアは、過ちを長期に
わたり徹底的に検証したそうです。
メディアにとって重要なことは、過ちを検証する勇気があるのかだと
教えてくれました。
過ちを検証する勇気のない日本のメディアはただの「クソ」です。

ノリック007