劇場公開日 2019年2月9日

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「一昔前ならアラン・パーカー監督が撮っていたかも知れない」ノーザン・ソウル あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一昔前ならアラン・パーカー監督が撮っていたかも知れない

2019年2月17日
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鑑賞方法:映画館

一昔前ならアラン・パーカー監督が撮っていたかも知れない
さらば青春の光、ザ・コミットメンツと同じく正統的な系譜に連なるUKの音楽シーンを中心に据えた青春物語だ
時代的にはその中間というか、前者の映画の10年後が舞台になる

ノーザンとは英国北部のことを指す
舞台の町バーンズワースは架空の名前で恐らくマンチェスターのことだろう

1974年といえばフィラデルフィアソウルの全盛期だ
第一次ディスコブームだ
日本もこの頃に赤坂のムゲンや六本木のエンバシーといった伝説のディスコがオープンしている
一方英国の北部では、その頃そのような主流のヒット曲には目もくれずこのような世界が合ったのだ
さらば青春の光で描かれた世界が、時代が流れてもこのような形で続いていていたということだ

ソウルとはもちろんSoul Musicのこと
一言でいえば米国での黒人向けの歌謡曲
それがディスコブームを経て世界的にポップスの下敷きになり、殆ど全ての流行歌はこれの影響下にあるといえるだろう

そして誰も知らないスゴイ曲を発掘してフロアの客を驚かせるDJのスタイルはこのノーザンソウルの世界からの流れだ

米国でも同じ流れはあったがそれは、NetfrixオリジナルのビデオシリーズGet Downで描かれるとおりの展開を遂げrapや繋ぎ、スクラッチといったスタイルを産み出していく

日本ではこのようなクラブシーンはずっと後年のことになる
同時期はソウル好きのレコードコレクターが個人的に集めているのみであった
それが次第にコレクター同士のサークル的な活動となって、ひっそりとソウルをかけるバーに集まり秘蔵のレコードの自慢をしあう程度で、どちらかというと聴き鑑賞することが主体で踊ることはほぼなかった
つまりソウルが好きなレコードマニアだけの閉じられた世界だった
ノーザンソウルは彼らの収集した膨大なコレクションの中に含まれていたが、それがノーザンソウルというくくりで認識されるようになるのもずっと後年のことで、その概念もUKのコンピCDから理解されてきた流れだろう
しかし、この膨大なコレクションは今や世界的に有名になりそれを求めて世界中のコレクターが日本にレコードの買い出し、発掘にくる時代になった
インターネットの世の中となり、ebayでレアシングルを日本とUKのマニアが高額で競り合うのは日常のことになった

ただ残念なのはレアなもの高額のものが素晴らしい、それを持っている俺エライという昨今の風潮は頂けない
そんな格好悪いことは本作の登場人物はしない
本当に良い曲、知られざる名曲を発掘すること、そしてそれでみんなを楽しませることが主体のはずだ
それはレアであるとか高額であるとかは一切関係がない
だから、21世紀の現代なのだからもはや7インチのレコードでなくネット音源であっても構いはしないのだ
それを理解できない人には本作の本質が全くわからないと思う

映画としては今一つなのは否めない
しかし中盤以降俄然物語が走り始める
主人公とキャッシーが車の中で結ばれるシーンは忘れていた熱いものがある

音楽はさすがにのれるいい曲が沢山聴ける
好きな人は是非観るべきだ

観終わった後、神戸で一番の老舗ソウルバーのムーンライトとノーザンソウルを聴けるパブで有名なパブケネスとはしご酒してしまいました
最高に美味しいお酒を飲めました

あき240