「鋼の檻と硝子の夢——禁断の英雄譚」ミスター・ガラス 団鬼一さんの映画レビュー(感想・評価)
鋼の檻と硝子の夢——禁断の英雄譚
人間の心の深奥に潜む欲望と、それを鎖で縛ろうとする現実の禁忌。その狭間で悶え苦しむ者たちの物語——「ミスター・ガラス」はまるで、我が筆にて描き上げた禁断の戯れのようではないか。
シャマラン監督の映像美は、まるで皮膚の下に埋め込まれた針のように鋭く、痛みを伴いながらも快楽を生む。ブルース・ウィリスの寡黙な強さは縄のように絡みつき、サミュエル・L・ジャクソンの冷徹な知性は鞭のように観る者の心を打ち据える。そして、ジェームズ・マカヴォイの多重人格が紡ぎ出す狂気は、まさに官能と恐怖の極致だ。
物語は三者三様の悲劇を描きつつ、最後には運命の檻という牢獄に彼らを閉じ込める。自由への渇望は、もがけばもがくほどその緊縛の強度を増し、解放の刹那をさらに強烈に感じさせる。観客はその果てに訪れる、甘美で残酷なカタルシスにひたすら飲み込まれるのだ。
「ミスター・ガラス」は、ただのスーパーヒーロー映画ではない。それは人間の弱さと強さ、破滅と救済が交わる、闇夜の中の濃密な戯曲である。そして私たちに問いかけるのだ——あなたの内なる異端は、果たして解き放たれるべきなのか、と。
この映画を観ることは、あたかも禁断の扉を開き、その向こうに広がる魅惑の世界へ足を踏み入れることに他ならない。果敢に飛び込む覚悟がある者のみ、その快楽と真実に触れられるだろう。
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