「脱獄物からバディ物へ」パピヨン mami555さんの映画レビュー(感想・評価)
脱獄物からバディ物へ
旧作のリメイクを期待するひとには物足りないところ不満点は多々あるとは思われるが、これは旧作とは描写したいところが違うことを念頭に置いて観てほしい映画だ。制作サイドもあえて旧作は意識せず、原作準拠でさらに監督が描きたかった「パピとドガの関係」に焦点を置いたといろいろな媒体で述べている。
結果、脱獄物からバディものへとテーマが変わった。
チャーリー・ハナムが演じるパピヨンは男らしさの中に曲がることのない少年ぽい正義感がある。このパピヨンを苦手と思う人は少ないのでは?
一方のラミ・マレックが演じるドガは前半では世間知らずでおどおどとしてとことん役に立たず。非常に腹立たしいw。が、ラミが演じると愛らしくなってしまうのだから演者というのは恐ろしい。
二人の関係が大きく変容するのはパピヨンが最初の独房に入ってからで、ここからバディ物としてのパピヨンの本領発揮である。
脱獄という目的が一致したときの二人はまるでいたずら小僧のようであった。
松浦美奈の翻訳も華を添えて切なくも後味の良い映画になっている。
二人の関係性を際立たせるために実際は撮られていた幾人かのキャラクターは存在自体消されている(パピヨンに寛容な看守、ドガの友人となる囚人、有名なハンセン氏病の男とのやり取り これらはデリートシーンとしてDVDには入っており、試写会でも上映された)
パピヨンの行動原理が「脱獄する」の一点であるのに対しドガのそれは少々複雑である。ネットでは女性を中心にとくにドガの心理に関して議論がなされており面白い。
とにかく、旧作とは描きたいものが違うので出来たら全くの新作として観ていただきたい。