エセルとアーネスト ふたりの物語のレビュー・感想・評価
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想像を膨らます
市井の人々が当たり前に営んでいる生活、その生活が壊される戦争について、当時の人々の作り物ではない生の声が聞けたように感じました。今も戦争を経験していない人間が戦争を美化し庶民を騙して金儲けをしようとしていますが、今作の様な作品があるだけでは駄目で、鑑賞する私達も想像を膨らませ、先人達の言葉に耳を傾けないとまた同じ過ちを繰り返すだけだと思います。
そして、エセルとアーネストの様な普通の庶民である世界中の先人達に思いを馳せたら、なんだかとっても温かい気持ちになりました。
自分もこんな人生送れるかなー、と。
激動の人生を過ごしても生を受け老いていくんだなー、と。この二人のように人生で寄り添えるパートナーと出会えると良いんだけど。
それと映像が最高。ブリックスの淡い線の感覚や色彩感覚が絶妙なバランスで融和してる。いい作品だった。
愛が深い優しい気持ちになれる映画
作り手の愛情を強く感じました。
絵本のタッチに近づけるために新しい技術を開発する意気込み、原作への愛が深い人たちが大切に作った作品で、それだけでもいとおしいです。
日本人が憧れる上流階級の英国ではなく、ごく一般大多数の労働者階級の夫婦がすごすその時代のごく普通日常を丁寧に描いているのをはじめてみました。
使っているもの、言葉、所作、普段目にする映画では描かれない様子が新鮮で。『物語は細部に宿る』とはこのことかと思いました。
そして物語はやさしくて愛しくて。
悲しいけれど最後の時に夫を忘れても初恋の思い出に戻るお母さんに愛情の深さを感じて泣いてしまいました。
事件性も派手さも奇抜さもない、昔の上質な文学に触れた気分です。
そして見終わった後、親に友人に連絡取りたくなりました。
絵本をアニメ化する意味
原作絵本(あるいは、グラフィックノベル)に、あまりに忠実であったので、びっくりした。
動きを付け、シーンを補完しているだけで、絵や台詞は、本質的には変わらない。
初見の人は、原作の内容を堪能できるだろう。
ロンドンの庶民の平凡な人生は、万国共通の人間的な共感を呼び、社会風俗の生き生きした証言になり、戦争という「普通じゃない時代」ではドラマチックでもある。
しかし、前日に図書館で、原作を読んで予習した自分は、複雑な気分であった。「映画館に来る必要があったのか」と。アニメ化する意味は何か? と考えてしまった。
アーネストのロンドン訛りっぽい台詞が聞けるが、労働党びいきな描写は最小限に抑えられている。
また、品のない表現や、ヒトラー・スターリン・ユダヤ人・中国人といった言葉の使用は避ける傾向がある。
制作陣は、原作のラフスケッチ風の絵柄(“ルック”)の再現に苦労したらしい。色彩はほぼ完璧で、一部の背景も忠実だが、全体的には良くも悪くも、原作より緻密できれいだ。
キャラクターは手描きとのことだが、動くがゆえに、さすがにラフスケッチ風とはいかなかったようだ。なお、動きは3D的であり、動く絵本ではない。
映画を先に見ると、描き方がラフで動きのない原作を読んでも楽しめないかもしれない。
しかし、原作を先に読んだ自分には、このアニメ作品が、妙に“のっぺり”と引っかかり所がなく思えて、正直なところ退屈してしまった。
エセルもアーネストも、一般観客向けに、どことなく無難なキャラに丸められ、お国柄も今一つ伝わってこない感じがする。
ポールのエンディングの歌も、平凡だった。
また、なまじ原作を先に読んでしまうと、アニメ化による何かの“プラス要素”を期待してしまう。しかし、本作は忠実な再現を優先するあまり、アニメならでは、という魅力には乏しい。
むしろ、原作絵本を知らない方が、率直に本作品を味わい、感動できるのではと思った。
一番世界成長した時代に生き抜いてきた二人
「スノーマン」の絵本作家レイモンド・ブリッグズが自分のの両親をモデルにした作品の映画。最初あれ?アニメでないの?っていう出だしからびっくり。両親の出会いから最後に至るまでのストーリーも映像美もとっても丁寧に描かれていました。イギリス女性らしく?プライドが高い様子が垣間見れる奥さんの姿もちょっと笑えました。第二次世界大戦当時の苦難中でも庶民の立場で明るく懸命に生きてきた夫婦。イギリスの「この世界の片隅で」という感じかと思いきや、それだけでなく、その後の高度成長時代までずっと描かれていて、あぁ1920年代後半~1970年代の時代が一番大きな変化があった年代だったかもと改めて思いました。多くの電化製品などの普及でかつてないそして現代にもない程の成長し続けた世界経済。新たな製品で需要がいっぱいだった当時。現在では何でも品物ってあるし、もうこんな経済成長は今後ないかもしれないとも感じられました。苦難を乗り越えて生きてきた当時の人達が一番世界の成長を感じられたかもしれませんね。エンディング曲のポール・マッカートニーの歌声も良かったです。試写会当日は私の誕生日でした。素晴らしい映画の鑑賞をバースディプレゼントとして下さって本当に嬉しかったです。大感謝です。
人類皆夫婦(^^)
イギリス人も日本人もおんなじ。
ささやかな生活の中に、たくさんの幸せを感じながら生きていることを、このアニメで教えてもらいました。
時は1930年代、牛乳配達員のエセルと、メイドのアーネットの出会いから、物語は始まります。
時代の流れが目まぐるしく動く中、二人の生活も多種多様に変化していく…。
そんな時代の中、変わらない二人の愛がとても素敵でした。
牛乳配達員としての誇りを胸に、配達一筋で働くエセル。
そんな、真面目な彼に時に意見し、時に従い支えながら家庭を守るアーネット。
ヒトラーの独裁制がスタートし、徐々に戦争の影が忍び寄る時代。
しかし、その生き方は実に生き生きと輝いて見えました。
時代は変わっても、市民の生き方は簡単に変わるものではなく、みな慎ましやかに暮らしいる。
これまでイギリス=誇り高い貴族のイメージがありましたが…。
この映画でそんなイメージががらりと変わりました!
こんなにも普通な暮らしをしていたなんて!
この映画で、イギリス人の生活を詳細に学ぶことができました。
お茶や食事の仕方、掃除、洗濯、仕事、進学、子育て、全てにおいて感じたのは、普通であるということ。
日本人と同じように、家電を揃えて仲睦まじく一家団欒を続けている光景。
夫は新聞を見ながらブツブツ文句を垂れ、妻は隣近所に見栄を張りつつ、息子の成長を心配している。
世界共通、どこにでもある光景がこのアニメでもたくさん感じられました。
こういう何気ない日常を描いた作品って、意外に少ない…。
しかも、その描写をアニメで詳細に描いていることにびっくり!
細い線と淡い色合いは、絵本そのもの。
まるで絵本が動いているかのように感じられました。
また、音楽もすごく豪華!
ポールマッカートニー氏が、書き下ろした楽曲がエンドロールに流れるという奇跡。
どうやら、彼はレイモンド氏の作品のファンのようで、この映画の音楽も快く引き受けてくれたとのこと。
素晴らしい画報と、豪華な音楽という、贅沢な仕上がりに感動しっぱなしでした!
今回、試写会の後に林望さんを迎えてのトークイベントがありました。
林さんはイギリスの生活にとても詳しく、その細かな描写がとても緻密に描かれていることを解説してくださいました。
イギリスの階級制度のこと、労働党と保守党のことなど、様々なイギリスの暮らしの仕組みについて分かりやすく話して頂き、より作品の世界を深く理解することができました。
イギリス英語の表現や、生活様式など、興味深いことばかり…。
30分のトークイベントでしたが、もっと色々と話を聞いて痛かったです(^^)
心が優しくなれる絵本を書くことの多いレイモンド氏が、大人向けに描いた今作。
これはきっと、彼が両親のことが大好きだったからこそ、二人の幸せな姿を残しておきたかったのではないでしょうか?
私も、こんな理想の夫婦になれたらいいなと思いました(^^)
今日は本当にとても素敵な作品をありがとうございました!
幸せなひと時でした(^^)
とても素敵
美しい絵と素敵なストーリー。英国版「この世界の片隅で」という雰囲気です(時代も同じぐらい)。何気ない夫婦の会話にクスクス笑ってしまいました。戦争という大変な時代を楽しく寄り添って生きた二人の幸せでささやかな生活に胸が熱くなりました。
風が吹くとき
原作者レイモンド・ブリッグズをご存知の方なら、この作品がどれほど観ている者を引き付けるかを知っているに違いないが、初見の人でも何かを感じるに違いないと思う。ごく平凡な家庭を手書きの柔らかいタッチの中に躍動感を失わないものに作り上げている。シナリオ自体も両親の出会いから戦争を経て1970年代初めから80年にかけて文化や常識が大きく変わろうとしているところを仰々しく描いてはいない。個人的には、あっ気ないほど淡々と時が進んでいく。
ディズニーや日本のアニメには、それぞれの特徴があり、興行収入を稼がなければならないという前提があるが、それを否定するつもりは全くないが、アカデミー賞長編アニメーションがディズニーの一人勝ち状態がここ10年近く続いているのは、違和感を感じる。
アメリカ英語とイギリス英語の違いやイギリス独特の言い回しやスラングと男性が使う英語をアーネストの言葉使いでわかるところもある。
トライアンフの4ドアセダンが登場するが、1958年製のオースティン1100に一時期乗っていた経験があり、押しがけをしたことを思い出した。
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