「英国の片隅に」エセルとアーネスト ふたりの物語 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
英国の片隅に
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激動の20世紀、ロンドン大空襲、世界恐慌など劇的に描こうと思えばいくらでも材料にはことかかないでしょう、ところが本作はブリッグズ一家の日常を淡々と描いてゆくだけ、「この世界の片隅に」と比べたら感動作とも言い難いが同時代の英国の片隅の市井の物語としては貴重ですね。
新聞やラジオで報じられる世界の出来事も二人の受け取めを言葉で紡ぐだけ、それでも同時代を経た観客は自身の体験を被せて束の間のタイムトリップに浸れるのでしょう。
資産家でもなく職業も牛乳配達、共稼ぎとしても恵まれた生活ぶりには驚きを禁じ得ない、母親は感情の起伏の激しい人柄で時に辛辣に描かれる反面、父親は息子の良き理解者で明るい性格、たぶんレイモンドさんは父親っ子だったのだろう。相思相愛かと思っていたが認知症になった母親は夫を好きな映画スターに変えていたのには驚いた、悲しいシーンにユーモアを足して和らげる気遣いにはやられます。
レイモンドさんの心のフィルターを通したご両親の歴史、自身の生い立ちの物語、苦労話は省いている感はあるものの、ことさらの美化も誇張も無いのがかえって自然に思えるのもアニメ表現の良いところなのでしょう。ただ歳をとらない黒猫のスージーはミステリアス、イギリスでは黒猫は幸運のシンボルとされているようです、何か含みがあるのでしょうね・・。
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