「【”それでも、僕たちは前に進む・・” 人間の善性に溢れた純愛映画。奥田瑛二さんの存在が、しっかりとこの映画を引き締めてくれています。】」10万分の1 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”それでも、僕たちは前に進む・・” 人間の善性に溢れた純愛映画。奥田瑛二さんの存在が、しっかりとこの映画を引き締めてくれています。】
ー恋愛コミックの実写化映画を観るのは、いつ以来だろう・・。幾つかの要素に惹かれて、鑑賞。-
■印象的なシーンの感想
1.序盤は、少しコソバユイ感を抱きながら、鑑賞。
桐谷レン君(白濱亜嵐:ファンの方には申し訳ないが、初めて知った。男気がある魅力的な高校生を、しっかりと演じている。)と桜木リノさん(平祐奈:同じく、初めて知った。難しい役を健気に演じている。)は、友人のチヒロさんとシュウ君の陰ながらの応援もあり、両想いだったことが分かり、付き合う事に。
- カップルでもある、チヒロさんとシュウ君が二人のために陰ながら応援する姿が、実に良いのである。勿論、レン君とリノさんの人柄があってこそ、あの友人がいるわけであるが・・。-
2.リノさんの足には、傷があり、本人も気にしている・・。彼女の両親は亡くなっており、喫茶店を営む祖父(奥田瑛二:この人が、演技をするだけで映画全体が締まる。)に育てられているようだ。
ー 桐谷レン君が、初めて祖父と会うシーンが少し面白い。
初めて彼女の家に連れて来られて、奧田さんが出てきたら、それは、ビビるよなあ・・。 でも、角度90度でお辞儀をして大きな声で挨拶! 流石、剣道部の主将だな!ー
3.徐々にリノさんの身体に異変が生じてくるシーンの数々。医者から告げられるALC宣告。
- 祖父が、”大事な時に作るオムライス”を作り、二人でテーブルに座って食べるシーン。奥田さんの抑制した演技が二人の深い悲しみを観客に伝える・・。-
4.チヒロさんがリノさんには内緒で、ALS患者の高山さんと連絡を取り、高山さんに会わせるシーン。
- チヒロさん、素晴らしき友人である・・。バス停で待っていた桐谷君にリノさんを任せ、去るシーンなど、大人でもナカナカ出来ない配慮である。
◆そして、リノさんは、初めてALS患者で身体が動させない高山さんと会う。ショックを受ける二人だが、高山さんが、身体が動かせなくても“話し”、リノさんに”初々しい・・、僕の奥さんも昔は初々しかった・・”と言って、奧さんを揶揄ったり、リノさんに”別の身体に入れ替わっただけと思っている。中身は変わらない”と告げるシーン。
奧さんが、レン君に”貴方が頑張り過ぎては駄目よ!それが、リノさんにとっては、負担になるから・・”とサラっと大切なアドバイスをする・・。
◆この一連のシーンは、今作の中でも、派手さはないが”胆になるシーン”だと思う。何故なら、二人の思想が高山さん夫婦と会った事で、ポジティブに切り替わったシーンだからである。
5.レン君とリノさんの初めてのお泊り旅行。最初は一泊の筈だったが、リノさんの願いで”昔、両親と見た星空をレン君に見せたくて、”逃避行”するシーン。
- 最初は驚く奧田さん(この方をお爺さんと書く事に、違和感があるので・・、奧田さんと記載する。)が、旅行を許し、描かれないがレン君も来たという事は・・。二人を見守る親も偉い。そして、レン君がリノさんを背負って雪山を少し登り見た、星空。良いシーンである・・。-
6.リノさんが自分の病気をクラスメイトに話すシーン。
- 最初は、レン君が付き添い、そして、チヒロさんとシュウ君も駆け寄り、クラスメイトに”お願い”する。意地悪をしていた女の子たちも、励ます声を掛ける。善人ばかりであるなあ・・。表現の仕方は人それぞれだが・・。-
7.卒業式のシーン
-ここはもう・・。
そして、レン君が医学部に合格した事に対し、奧田さんが”頼むぞ!”とレン君の顔を見て、声を掛ける・・。-
<重いテーマを扱いながらも、鑑賞後、人の善性って良いものだなあ・・、と感じた作品。 ラスト、大切な女性をしっかりと守る決意をしたレン君は、もう立派な大人である。
三木康一郎監督が、そんな二人と、二人を支える多くの人々の姿を爽やかに描いた作品でもある。>
■補足
・容易に類推出来るのであるが、今作を観て”綺麗すぎる・・”とか”そんなに上手くいかないだろう・・”とか意見が出ると思う。
ALSの現実にスポットを当てた優れた映画は多数あるが、私はこの作品は、この描き方で良いと思う。何故なら、若者達が”難病に屈せず、前へ進もうとする姿”を描いた作品なのだから・・。