「自主制作ならではの自由さが欲しい。」お米とおっぱい。 chao2sukeさんの映画レビュー(感想・評価)
自主制作ならではの自由さが欲しい。
プロット自体は三谷幸喜の「12人の優しい日本人」と同じ「全員一致するまで議論を続ける」のテーマの元に答えの出ない議論をする会話劇で、物語が進んでいくうちにその人のバックグラウンドや譲れない思想のぶつかり合いが生まれる、という形のドラマです。
残念なのは、自主制作の映画にも関わらず、時間的な制約があるかのように物語を急展開させてしまうところ。
「丸メガネの男」がおっぱいに拘る理由が父親への反抗心だけなのであれば、最終的な結論に至るまでに、それを説得されるカットが必要です。終盤のトイレのシーンは時間軸的に議論が終わった後なのですが、あそこで考えが変わったように見えるのでご都合的に見えてしまいます。
「今はお米とおっぱいの話をしているんだよ」というセリフは伏線回収にはなっていますが、あれで納得したのだとしたら、「丸メガネの男」が納得したのは議論に私情を持ち込むな、という理由になってしまい、物語の深みがなくなります。
また「理論的な男」がブラジャーをしている理由もあいまいなままですし、あれを見せたからと言っておっぱいに変わる理由にはなっていません。「短気な男」も最終的な提案は議論の末のように見えて、実は一番最初から言っていた「どっちでも構わない」という意見のままですので、深堀りされていないように見えます。
と、秘密を抱えている男たちがその秘密を見せていく過程は良くできているのですが、それが物語に影響を与えるまでに関連していないので、全体的なストーリーが浅く感じてしまいました。
「議長」の語る、この会議を開いた理由も、あれではただの道楽だと言っているようなもので、もう少し切羽詰まった理由が欲しかったです。
全体的に作りこんだ設定を映像に転嫁する段階で削ったものが沢山あるように見えました。結果イマイチ鑑賞後のカタルシスにつながらなかった、という感想でした。
小説だったらもっと面白くなったかな、と。