「生きてくって大変だ」岬の兄妹 きさらぎさんの映画レビュー(感想・評価)
生きてくって大変だ
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兄・良夫がとにかく浅はか。だけど見ていて嫌な気持ちにならない。愛嬌があるのかな?
生活保護とか、仕事探すとか、もっとやることあるだろと言いたくもなるが、
「なにもかもお前のせいだ」
と言いたくなるくらい追い込まれているというのがよくわかった。
そして何より、真理子役の女優さんが凄かった。何も違和感が無かった。丁寧な役作りが感じられた。すごい。
肇、お前が一番介入しなきゃダメだろ、っていう感じ。良夫に言われた「偽善者」という言葉が綺麗に当てはまるキャラクターだった。これは観ている側にもグッサリ刺さる言葉だったと思う。
以下、印象的なシーンなど。
ヤクザの客の後、目張りをはがすシーン。
解放感や、吹っ切れた感じもするが、そこには諦めもあったのかもしれない。
妊娠のことを客に知らせに行くシーン。
真理子の本当の気持ちはわからないが、あの大泣きには胸が締め付けられた。
ラストのシーン。
電話が鳴る。台詞は無い。二人の表情がとても良い。
真理子はあの動きと話し方が知的障碍者としての彼女の特徴を表しているけど、喋らずただ黙っていることで、一人の人間、一人の女性としての彼女の気持ちが全部表情に出ている感じがした。すごく良いラストだったと思います。
それから、忘れてはならないのがプールのシーン。
奇想天外なウンコバトルには大いに笑わせられました。
真理子と周囲の会話が嚙み合っていないところは、微笑ましくもささやかコメディが忍ばせられていて、そのお蔭で暗くなり過ぎず、あくまでもあの兄妹が逞しく生きている様を切り取った映画になっていると思います。
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