「汚いモノだらけ」岬の兄妹 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
汚いモノだらけ
外見もやってることも服も家の中も家の外も人間も、画面に映るものだいたい全部汚くて、饐えた臭いが漂ってくるようだった。
真理子の笑顔だけずっと可愛かった。それを痛々しく思う気持ちも正直あるが。
リストラされた身体的障碍者の兄と自閉症の妹、家族も頼れる隣人も特におらずかなり詰んでいる。
自力で生きるのは無理に等しい妹はまだしも、生活保護申請するとか頑張れば何かしらやりようのあるはずの兄が本当に頭が悪くて惨めで気持ち悪くて、キツいとかしんどいとか以前に嫌悪感が強くてどうしようもなかった。
ただ、その「やりよう」を見つける頭も探す手段も助言してくれる人も無くて、抜け出す術を思いつく前に追い詰められてどうしようもないのも痛いほどわかる。
ここまでの状況ではないにしても、小さなことでも、どうしようもなくなって負のスパイラルに陥ることって珍しくないじゃない。
お願いだからもう止めて、頼むから勘弁して、の連続連続で最初はものすごく落ち込んでいた。
しかしそのうちだんだん開き直りが移って、なんだか楽しくなってしまうのが不思議。
そりゃあんな杜撰に売ってたら妊娠するでしょうよ。
どういう選択をするのかとハラハラしていたけど、まあ堕ろすしかないよな。
こんな状況でも小さい人間の塊は生きようとしている。どうしようもない。
「逃げないで」の言葉に辛くなった。
最後の真理子の表情、あれがどんな感情なのかずっと考えているけど全くわからない。
ティッシュの甘さを見つけるように、小さな歓びを日々拾っていた真理子にも塞ぎようのない傷が付いたのか。
かなり嫌な考えだけど、あの後最悪なことになれば良いんじゃないかなんて思ってしまった。
二人の気持ちは終始理解しきれずにすごくモヤモヤしていて、こんなんならもういっそ消えてしまった方がマシなんじゃないかと。
取り返しのつかない事態になった時、良夫がどうするのか気になる。
復職の希望なんて脆すぎる。
真理子を平気で買える男性達に終始引いていた。
小人さんと良い感じになれるのかな?なんて一瞬でも思ってしまった私は甘かったか。
愛はなくても癒しと楽しさはあったとは思うけど。
それにしてもどうしても嫌悪感がある。良夫にも客にも。なんでだろうな。
いじめられっ子の笑顔は可愛くて笑った。
小人さんに対しての真理子の言葉や、突然のウンチ攻撃に笑う。いやウンチ攻撃ヤバすぎる。本当キモいよ。
ちょくちょくコミカルをぶち込んでくるのズルい。
そういう所でキャラの愛嬌を感じさせられた。
マクドナルドのハンバーガー食べたくなる。
やっと稼いだお金で買うのがマックかよとか、もっと有り難く食べれば良いのにとか思うけれど。汚かったな。
面白かった。シゲル好き。