「笑えた瞬間から、別の映画に見えてくる」岬の兄妹 shironさんの映画レビュー(感想・評価)
笑えた瞬間から、別の映画に見えてくる
タブーに切り込んで人間の本質をあぶり出す衝撃作!そんな韓国映画に驚かされる度に
「70年代ならともかく、今の日本の映画界ではまず作れないなぁ。。」と感じていましたが
ついに肝の座った監督登場!かなり深々と斬り込んでくださいました。
クラウドファンディングさえ利用せず全て自費とは驚きましたが、誤解を恐れず逃げが無い作品を撮り切ったストイックさにも痺れました。
張り切って鑑賞させていただきましたが、やはり、文化の違う隣の国のお話と、実際に日本が舞台で日本語で語られる物語とは全く違っていて、思っていた以上に生々しかったです。(^◇^;)
でも、胸をえぐられるようなシーンや、思わず目を背けたくなるシーンのなかに、笑えるシーンも沢山あって…
正直、最初は笑って良いのか戸惑いました。
このシチュエーションで笑ってしまうのは不謹慎なのでは??
そんな思いが心のどこかでブレーキをかけていたのだと思います。
でも、思わず吹き出して、声に出して笑ってしまった瞬間を境に、それまでとは全く違った映画に見えてきました。
ネタバレしない程度で例えると…
「必死なお兄ちゃんを尻目に、マイペースな妹との噛み合わない会話」で笑えなかったのは、どこかで私が二人を社会的弱者だと思っていたから。
お年を召した方に妹が「シワシワ」と言うシーンで笑えなかったのは、そんな事を言っては相手に失礼だと思っていたから。
でも、わざわざ口に出す事はなくても、そもそもシワがあるのは悪い事なの?
健康であることは大切だけれど、必要以上なアンチエイジングで、シミシワを無くそうとする風潮で、自分の中に変な価値観が植え付けられている事に気づかされました。
そんなペラペラな固定概念への問いかけは各エピソードに散りばめられていて、その一つ一つが無理矢理剥がさていく事で、初めて固定概念とは別の世界に生きている妹の喜びや悲しみに気づくことが出来る。
“社会的弱者=気の毒な人、可愛そうな人、助けてあげなくてはいけない人”ではなく一人の人間として身近に感じる事ができたタイミングで、笑えた気がします。
本作は、決して福祉や支援の届かない社会を憂う映画ではない。
むしろ社会やマスコミが植え付けた上辺だけの固定概念を捨て去ったところで、「人間が生きるということはどういう事なのか?」をとことん描いている作品だと思います。
それはシンプルな欲求。“食欲、性欲、睡眠欲”だったり、一緒にいる心地良さだったり。
かなりの荒療治ですが、心のリハビリになりました。
もちろん映画としても素晴らしく
今は亡き安西水丸さんが「2、3秒でも良いシーンがあればいい。」とおっしゃっていましたが、
ピンクのチラシ
窓ガラス越しの会話
女医の一言
そして何と言ってもラストの表情
私の中では、一生忘れられないシーンとなることでしょう。
〉笑えた瞬間から、別の映画に見えてくる
レビュー読ませて頂きました。
笑うって大事。笑いたいと思った。
「泣くな。笑え」とルームロンダリングで渡辺えりが言ったセリフをふと思い出しました。
突然コメント失礼しました。
悠々同盟さん、コメントありがとうございます。
監督の手腕は言うまでもありませんが、出演者のアンサンブルも素晴らしかったですね。
息の合った演技でないと“笑い”にまで到達しないと感じました。