劇場公開日 2019年4月5日

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「二代目チェイニーの作り方」バイス shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0二代目チェイニーの作り方

2019年3月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

運命の歯車が噛み合って生まれたモンスター!

当時ニュースで見た程度の知識しか無いうえに、
めまぐるしく変わる時系列に振り回されて、展開についていくのがやっとでした(^^;;
いや…展開と言ってもベースは史実なので。
時代背景や相関図、力関係などがわかっていたら更に100倍は楽しめたのではないかと思うと、自分のバカさ加減が悔しいです。(>_<)

でも、ハードルが高くて、見る人を選ぶ映画かと言うと、決してそうではなく
エンタメとしての面白い仕掛けがたっぷりあって、スピーディで息つく暇なくドキドキハラハラ☆
頭の中も、相当忙しかったです。
「なるほど!これがニュースで見てた、あのスピーチに繋がるのか!!」
と思うと同時に、頭の中で当時の記憶が蘇り…
あの頃は「アメリカが言うんだから、核兵器はきっとあるんだろう。」と信じていたなぁ。(-.-;)

テロを許さない強硬な姿勢は必要だと思うけれど
まさか裏で、こんな風に物事が決定していたとは!!驚きの連続でした。
もちろん、おおいにフィクションの部分もあるのでしょうが、何故“今”この映画を作ったのかが、わかった気がしました。

民主主義で選ばれたリーダーに、権力が集中する恐ろしさ。
これでは、民主主義の根底を揺るがす独裁者と変わりない!!
皆んなが選んだ人だからって、何をしても許されるのか??(許されるんですね、これが)
チェイニーに至っては直接有権者に選ばれた訳でもないのにっ!
そんな得体の知れない人が好き勝手に法律を捻じ曲げて牛耳れるシステムが、今でも存在しているなんて。。:(;゙゚'ω゚'):

この映画、ブッシュ政権を描いているようでいて、トランプ政権へ警報を鳴らしているのではないでしょうか?

そう考えると、この映画でのチェイニーの描かれ方にも、すごく納得がいきます。

普通、歴史的人物ソックリさん映画は、その人に焦点を当てて、意外な一面や葛藤を描き出したりするものですが…
このチェイニーに関しては、人物への焦点がハッキリせず、終始、得体の知れない人物として描かれているようで、見ていてすごく違和感がありました。
家族の為に政界を退くくだりがあるのですが(←ここの演出が楽しくて大好き!!)
かと言って、内なる葛藤が描かれるでもなく。。。

まあ、そもそもが恋人に見限られない為に頑張って政界に入っただけなので、理念も主義も主張も無いのだから、フォーカスの当てようも無いですね(^◇^;)
ラムズフェルドと出会った事で、すくすくとモラルの無い政治家に育ち、
ブッシュと出会った事で自由に出来る権力を与えられてしまった。

三人に出会ったことで生まれたモンスター。

家族が安心して眠れる為には、多くの人々の運命を変えようが、命を奪おうが、何でもない。
こんな人物が権力を持ててしまう恐怖が際立ちます。
二代目チェイニーがホワイトハウスですくすく育っているかもしれないですね。

『ゼロ・ダーク・サーティ』の時も感心しましたが
まだ記憶に新しい出来事で、主人公をはじめ登場人物の多くがまだ生きているのに、こんな映画を作っちゃえるところが本当にすごい!

お気に入りのシーンとしては、電話のシーンが印象的でした。
執務室から嫁に電話するシーンが、とっても可愛い。(*´꒳`*)
嫁に褒めて欲しくて、頑張ったんだね。
ラムズフェルド師匠に最後の電話するシーンも、グッときました。

そして、切れ者の嫁がすごい!
飲んだくれ男の素質を見抜いて、自分が叶えなれない政治家の夢を託したのなら、かなりの策士。
時代が違えば、本人が立候補していただろうし、娘も不本意な嘘をつかなくて済んだのではないかと思う。
娘のカミングアウトのシーンでは、家族を第一に考える夫との対比が素晴らしい。
保守的な地域のなかで時代と戦った嫁目線の映画があっても面白いと思いました。
#バイス

shiron