「YELLOW MAGIC MOVIE」ビール・ストリートの恋人たち いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
YELLOW MAGIC MOVIE
色彩設計を丁寧に施し、黄色という暖かみを感じる色を感じさせながら、しかし映し出すその理不尽で厳しい現実を否応なしに観客に突きつける作品である。ハイスピードカメラによるスローモーション撮影を効果的にシーンに織込む事や、衣装のファッショナブルさ、屋内外の空間構図等や色彩も含めてハイグレードな映像美を実体験できる高レベルな画力を、こんな素人の自分でも理解出来る。そして主演の二人の演技、特に表情の造りは舌を巻く程である。初体験時の男のあの困ったようなしかし慈愛に溢れる顔は、そもそもアフロアメリカンならではの豊かな顔立ちも相俟って、ボリュームのメモリの細かさを強く印象つける情緒たっぷりの繊細な組立てである。
原作は未読であり、テーマ性も沢山の人達のレビューがあるので今更それに感想を述べる必要はない。それよりも正に丁寧に丁寧をコーティングしたような作品造りに称賛を贈りたい。ロマンティックでメランコリー、そして残酷で過酷な理不尽を表現できる優秀さを見せつけられたとき、芸術という才能は常にチャンスをものにしているのだと改めて思い知らされる。
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