劇場公開日 2019年7月12日

さらば愛しきアウトロー : 映画評論・批評

2019年7月9日更新

2019年7月12日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

R・レッドフォードは自らの神話性を、意表を突く形で見事に更新した

ロバート・レッドフォードは1970年代ハリウッドのメインストリームに君臨した神話的な大スターだが、自らの引退作でデヴィッド・ロウリーとタッグを組んだのは限りなく興味をそそられる。D・ロウリーは「セインツ 約束の果て」(13)で「ボウイ&キーチ」(74)、「地獄の逃避行」(73)という2本のクライム・ムーヴィーの傑作にオマージュを捧げた生粋のインディーズ・スピリッツを体現する逸材だからだ。

R・レッドフォードが演じる実在の銀行強盗フォレスト・タッカーは、十代から老境に至るまで16回もの強盗、逮捕、脱獄を繰り返した筋金入りのアウトローである。拳銃をチラ見させ、誰ひとり傷つけず、柔和な笑みを浮かべながら、冷静沈着に現ナマを奪う。被害者たる銀行員たちが異口同音に「紳士的だった」「とても幸せそうにみえた」と語るのが印象的だ。

追手の刑事ジョン・ハント(ケイシー・アフレック)もいつしかタッカーに友情にも似た奇妙な親近感を抱き始めるが、いっぽうで逮捕のきっかけとなるタッカーの娘の証言からは、この男の抱えるダークサイド、〝無慈悲な人でなし〟の側面も垣間見える。しかし、映画はタッカーの内面の闇にはあえて踏み込まない。「楽に生きたい」ではなく「楽しくなりたい」がためという独自の犯罪哲学を遵守し、嬉々としてアウトロー人生を全うしたこの破天荒な男の軌跡を軽妙洒脱なタッチで浮き彫りにするのだ。

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とりわけ、タッカーと謎めいた童女のようなジュエル(シシー・スペイセク)との晩年の淡い恋のエピソードは、シシー・スペイセクが「地獄の逃避行」の悲劇的なヒロインであるだけに長年のファンには堪らない(ハントの上司で「ボウイ&キーチ」の主役キース・キャラダインが一瞬だけ登場するシーンも見逃せない)。

ラスト近く、二人が場末の映画館で見る映画がモンテ・ヘルマンの「断絶」(71)であるのも泣かせる。「さらば愛しきアウトロー」が往年のレッドフォード自身が主演したハリウッド映画よりも、むしろアメリカン・ニューシネマのアンチ・ヒーローものの匂いが濃厚に感じられるのは、キャスティングも含めた、全篇に脈打っているアンチ・ハリウッド的なインディーズ精神ゆえではないだろうか。

クリント・イーストウッドの「運び屋」とは対照的なアプローチで、ロバート・レッドフォードは自らの神話性を、意表を突く形で見事に更新したのである。

高崎俊夫

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