ちいさな独裁者のレビュー・感想・評価
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権力への盲従
終戦間近の混乱期、脱走兵が偶然にも手にしたSSの制服で「独裁者」になっていく物語。だが、彼は段々と将校を演じていくのではなく、もはや身につけたその瞬間からその威力に取り憑かれているようにも見える。
丈の合わぬ制服を見抜く者もいるが、結局は互いが互いを「利用する」。戦争末期という混乱もあるが、何より「上の者に盲従する生き方」が恐ろしい。着ている本人が一番「制服」に盲従して残虐な行為を行なってしまうのだ。絶対的な存在の恐ろしさを感じた。
制服の威力を失った後の裁判も些か滑稽ではあるが寒気がする。
印象に残ったのはエンドロール。明らかに現代と思われるところで尋問する彼ら...。やはりどことなく薄ら寒くなるラストであった。
借りてきた権威とその盲従への恐ろしさをひしひしと感じた一作。
【カルト宗教団体の行為を(思い出したくもないが)想起してしまった作品。人は、何故容易に空っぽな洗脳にひっかかるのであろうか・・。】
ー 中身のない空っぽな人間が大衆を扇動し、残虐な行為を表情一つ変えずに取り巻きに指示し、又は自ら遂行する。ー
◆感想
・この映画の主人公に共感する部分は皆無であるが、何故彼がこのような蛮行をあの時代に平然と行った背景は理解出来る気がする。
・エンドロールで流れる、現代ドイツの街角で蛮行に及ぶ彼らの姿は制作サイドの現状に対する警鐘であろう。
・他の方も言及されていたが、若い世代に観て頂きたい映画である。
<現代でも、同じような状況が世界で繰り返されている。
人間とは過去に学ばない生き物なのであろうか・・。>
安倍首相に見せたい映画です。
心理描写に優れた作品ですね。ただ、わずか、ひと月にも満たない間に起こった事件であることを考えると、物事を単純して考える必要があるでしょうね。もともと、その個人が持っていた思想と呼べない思考を理解すれば、同じような事が、常に起こると考えた方が良いのでしょうね。警鐘として観ました。
生き抜くことに必死なあまり…
一つの小さな嘘をごまかすために嘘に嘘を重ね続け、やがてその嘘が膨れ上がってエスカレートし、嘘をついた人間が怪物となっていくという話だった
よくできたフィクションだなぁと思いながら観ていたら実話だった
1945年、第二次世界大戦末期のドイツ
上等兵のヘロルトは、ドイツ軍を脱走
その途中で大尉の服を拾い、大尉になりすます
そして、その嘘を突き通すために人を殺し、その行為はエスカレートしていく
例えば、目の前に警察官の服装を着た人がいて「ちょっと良いですか?」と職務質問されたら、疑う人はいないだろう
主人公のヘロルトは、ただの上等兵なのにもかかわらず、ナチスドイツ軍大尉の制服を拾って着て以来「大尉である」と嘘を突き通し続ける
ヘロルトは、なぜ、嘘を突き通し続けることができたのか
引っ込みがつかなくなったということもあるだろう
しかし、恐らく、実際にナチスの制服を着て上官のフリをしてみたら、周りからチヤホヤされて何でも手に入るし、気分が良かったんじゃないかと思う
そして、二度と元の脱走兵の生活には戻りたくないと思い
気に入らない人間を次から次へと殺すことで周囲に恐怖心を植え付け、 服従させたのではないか
果たして、ヘロルトは嘘をついていることに罪悪感も持たなかったのだろうか
いや、それぐらい、当時のドイツでは、罪悪感よりも生き抜くことに必死だったということだと思う
そこは戦場で、いつ殺されるかわからない状況の中、生き抜くためなら、どんなことだってやってやる
そんな「窮鼠猫を噛む」の状況だったんだろう
だから、この話は恐ろしいのだ
「死ぬ気でやる」人間は、何をしでかすかわからないのだ
そんな恐ろしさにゾッとしてしまう映画だった
戦争の狂気と人間の性を見せつけられた感じがしました
終戦間近のドイツ軍の上等兵ヘロルトが引き起こした詐欺と謀略の物語。脱走で追われる中、偶然空軍大尉の制服を手に入れた彼は、制服の持ち主に成りすますことに成功します。最初は飢えを凌ぐためのほんのお芝居の積りだったのでしょうが、言葉巧みな彼は規律で鳴らしたドイツ軍の上官たちをいとも簡単に誑かし、いつの間にか大変な権力を握るようになります。この辺りの流れは、詐欺師が人を騙す手口と全く同じなのですが、巷の制服詐欺の話とは違って、人殺しが仕事の軍隊ではたちまち人命に関わります。事実、物語は冗談では片付けられないような深刻な事態に発展して行くのですが、この物語が実話がベースと聞いて本当にビックリ。最初はコメディーのようなノリで観ていたのですが、ホラー映画でもないのに余りの狂気に背筋が凍る思い。「馬子にも衣裳」とは言いますが、見た目だけでこれほど容易に騙されてしまう人間の馬鹿さ加減、そして...一旦権力を持つと悪魔に豹変し得る人の本性に戦慄を覚えずにはいられませんでした。
今まで見た戦争物の中で一番エグく残酷だった。
だがそれこそが私たちにナイフを首筋に押し当てている。
残虐性は、自己愛からの他者への防御(は攻撃となる)や嘘、自らの平穏ゆえだ。
それは戦場だから引きずり出されたものか?
平和な日常には決してないものなのか?
based on a true storyのこの映画での物語のラスト。
そのラストの意味やエンドロールにこの映画のいち回答がある。
もう二度と見たくないが、胸糞悪映画の予感を感じつつ意を決して見に来て良かった。
未来ある柔軟な若い人に身てほしい。
きっと年を取って見たら、より残酷さがまして見えるだろうから。
騙されているふり?
制服を拾ってからの展開がわかりづらい。
しかし、そのわかりづらさが本作の独特のテイストになっている。
制服を信じる、信じるない。
騙される、騙されない。
登場人物を色付けするのがわかりやすい。
白と黒、赤と青、善と悪・・本作はそれをやらない。
いったいこの人たちが銃を撃つのは、騙されてるから?
自分の意思で?
敗戦濃厚の気配で自暴自棄になってる?
あれ?
一観客の自分自身は?
そしてエンドロール。
エンドロールでやっていることを劇中にどういれるか?
類似作品のようにならないように・・・みたかった。
演じる
他の方も書かれているが、主役の微妙なニュアンスを表す顔
非常によくできている。
ぐろいと言いながらも、そんなにぐろいシーンは多くないのではとかきながら、やっぱりそこそこあったかもな、、、
戦争中は命の値段が安くなる良い悪いでは無く。
エグいことをしたあとはやはりそれを解消するために馬鹿騒ぎしたくなる
人間なんて弱いものね、、、
現在と過去を考えさせられる実話
ナチスドイツの実在した人物の実話。
軍服を手に入れたことで、脱走兵から大尉に、そして偶然にも、奇跡は続く。信じがたい事だが実話!?ほんの2ヶ月間の出来事。
軍服の威力は凄い!そのパワーを存分に発揮させ、始めのうちは自分の身を守るためだったが、その権力に味を占め、段々と放漫な振舞いがエスカレートしていき、大量虐殺(しかもかつては自身と同じ立場の脱走兵)まで行ってしまう。
人は見た目と巧言(言葉巧み)で騙される。現代の世の中の歪んだ権力構造の闇をうかがうことができる。(議員バッチの威力等)
「彼らは私たちで、私たちは彼らだ。過去は現在なのだ。」というロベルト・シュベンケ監督の言葉の意味が分かる作品。
人間が作った虚構に
人間自身が翻弄される。
主人公は自分が周りを振り回していると感じていたと思うが、感情や思考をマヒさせていく。
制服もナチも、さらには国家も人間が作った仮定のお話なのに、人を支配している。
もちろんこの時代だからこそこんな極端な話になったけれど、今もずっと続いていることだ。
ドイツの俳優さんの目ヂカラが素晴らしい。
音楽、演出、エンドロールも素晴らしい。
消化できない。
終始、胸は強く打っていました。
何も生産しない虚しくなる映画です。
胸糞悪くなります。
こんなに大きな損害が出たのに、得たものは何だったのだろう。
映画を見終わった後の、へし折れた気分。
それぐらいにまで凹ませた監督の手腕は、悔しいけど凄い。
エンドロール。
他の方のレビューを見て意図を見出しました。
が、さすがに現代であれをやってはいけないでしょう。
ユダヤ人をはじめ、虐げられた方々への配慮が必要かと思いました。
制服と権威になびく小市民
制服を着て信用させるというのは、人間の社会的心理を利用した詐欺ですが、今でも行われています。警察官の制服をきた人が何か言えば、皆従うでしょう。帝銀事件は「白衣」と「腕章」が信用されました。
制服の権威で権力を得た小人はやがて、怪物へと変化していく。
他のレビューアーが指摘されているように、この小国の総理や取り巻きの政治家、高級官僚に通じるものがあります。権力の快感と執着!
やがてトランプやプーチンが英雄に見えてくる……。恐ろしいことですが、現実。
でも本当に怖いのは、権威に追従する部下=われわれ小市民の心理です。残虐なことも「総統が憂いておられる」と言われると、いともたやすく受け入れていく。
我が国でいえば、15年戦争のときには「天皇陛下」の名の下に全てが正当化されていた。
今やそれも過去のことではなく、それは、天皇という言葉への日本人の過剰反応を見てわかります。
エンドロールでトランジットモールに乱入した「ヘロルト即決裁判所」部隊の姿は、正に今ここにある危機の象徴。映画の恐怖ではなく現実の恐怖に目を向けろと監督に言われている気がしました。
我が国の沖縄辺野古基地周辺では、すでにああいった怪物が出現して市民に暴力を奮っているのを直視することが、求められています。
役職者は人格を変える
偶然拾った軍服を身にまとって大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを言葉巧みに騙して服従させていく作品ですが、どんどん主人公が傲慢且つ残虐になっていく姿は、現代社会の構図と全く同じなだぁ~、と思いながら鑑賞していました。
特にエンドロールの現代に置き換えて、主人公たちが一般人の手荷物を検閲する姿を見ていると、今の世界もすぐにでもこういう事が起こりえる危険を孕んだ世界なんだと、改めて恐ろしくなりました。
文句なしの傑作
権威とは何か。何によって担保されているのか。当方と同じく気の弱い一般人が畏れる権威や権力が、実は薄氷の上に建っている砂の楼閣かもしれないと思わせる映画である。
兎に角主人公の奸計が凄い。軍隊はヒエラルキーの組織だから上官の権威はほぼ絶対である。最上位の権威はハイル・ヒトラーでおなじみの総統だから、総統の名前を出せば大抵のことは通せる。首相案件という呼び方で国の基本である資料や統計を捻じ曲げる極東の小国にそっくりだ。
権威を証明するものは何かというと、これが意外に難しい。もしかしたら上級将校の軍服だけでも権威を得られるかもしれないというのがこの作品の設定である。必ずしもその人物が何かに優れている必要はない。権威に相応しい威圧的な態度や、横柄な言葉遣いがあれば、権威と認められることがある。
ナチスは役人でできた組織である。役人の基本は昔から自己保身と既得権益への執着だ。それは恐怖心の裏返しでもある。つまり、役人が権威と権力に従うのは恐怖心のためだ。もっと言えば、権威や権力は人々の恐怖心の上にかろうじて支えられているのだ。
主人公はナチスという官僚機構のそんな構造を知ってか知らずか、修羅場をくぐってきた老練な詐欺師のように、軍服ひとつで権威を獲得していく。最初は主人公の嘘がいつバレるかと思いながら観ているが、そのうちにナチスドイツという巨大組織そのものが、ハリボテの巨大な人形のように思えてくる。こんな嘘のかたまりが世界大戦を始めたのかと愕然とする思いだ。そしてそれを支えたのがドイツ人の恐怖であり、保身であり、既得権益への執着であったと考えると、同じことが世界各地で起きていることにも気がつく。現代にナチスがいたらチンピラに過ぎないが、それが虚構に膨れ上がると戦争を起こしてしまう可能性を持っている。人間はどこまでも小さく、そして愚かであることを改めて突きつけられた気がする。
全編にわたって綱渡りを観ているかのような緊迫感があり、目の覚める映像や衝撃的なシーンもふんだんに鏤められている。日本語訳詞の「さらばさらばわが友♪」ではじまるドイツ民謡が歌われるシーンでは、その歌が「わかれ」というタイトルだけに、いろいろな比喩を想像させる。最期の字幕で主人公のモデルとなった実在の人物の年齢を知って心底驚いた。文句なしの傑作である。
愚痴
未だヒトラーだのナチスだの、戦後は続くよ何処までもと宣う事をマスターベーションのオカズにしている連中が作り、学生の思い出作りに最適な政権批判をして夢精している連中が評価をしているという可能性をどこかに感じながらチケットを買ったが、明確な意思を感じる画面に杞憂は吹き飛んだ。
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