「仮の話だ、私は軍服を盗んだ。」ちいさな独裁者 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
仮の話だ、私は軍服を盗んだ。
実話だという。観ながら頭に浮かんでいたのは、落語の「らくだ」だった。はじめ、横暴なやくざ者と、そいつにいい様にこき使われていた屑鉄屋が、いつの間にか立場が入れ替わりだして、気の弱かった屑鉄屋がやくざ者を顎で使いだす噺だ。つまり、さっきまでAという立場だったものが、ちょっとしたきっかけでBになる。すると、Bとしての立ち振る舞いが板につくようになっていく。その状況が同類なのだ。
そして、そんなハロルトに気が付きながらも、そのまま便乗してしまおうと、虎の威を借る奴の浅ましさも描く。
まったくもって、精神が極限状態に陥った、終戦間際の狂気をまざまざと見せつけられた。先がどうなるか、そのヒリヒリ感とハロルトの「名演技」に脱帽。
ただ、エンドロールのおふざけは、悪趣味すぎるなあ。
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