「見逃さなくてよかった」蜜蜂と遠雷 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
見逃さなくてよかった
予告編を見て気にはなってなっていたけれども、スルーしていた。ムービーウオッチメンで宇多丸さんのレビューを聞いて見てみたいと思い、映画館に足を運んだ。
見逃していたら絶対に後悔していた。今年の日本映画で最高だと思う。
コンクールでの演奏場面がすごい。舞台袖の控え室からカメラが回り、演奏者の主観ショットに切り替わるので、見ている自分がそれぞれのコンクーラーとシンクロして演奏に臨む。会場からの視点に変わると、見ている自分たちが、一切の音を発することが憚られるコンクール会場と同じ緊張感に襲われる。劇場内では、誰もポップコーンに手をつけない。
演奏シーンがすごくよい、超絶技巧であることは、クラッシックに素養がない自分にもわかる。技巧的であること以上にピアノの弦が発する音の波が自分を歓喜の世界へといざなってくれる。
ピアノの音に酔いしれたのは、生まれ始めての体験。
なんていっても松岡茉優。トラウマがある元天才少女の見事に熱演していて、栄伝亜夜に一番感情移入してしまった。風間塵との連弾シーンは、もう一度見てみたい。月を見ながらピアノを一緒に奏でる二人は、音楽を心から楽しんでいた。
題名の「蜜蜂と遠雷」が不思議でしょうがなかったが、納得できた。自分もあらゆる音をミュージックとし楽しめるのではないかと思う。
自分も今回レンタルで見て、本当に劇場で見てればと悔やみました。
昨年の年間MY BESTにも入選していたでしょうに…。
改めて自分の判断力の無さを恨みました(>_<)
恩田陸、読んで損しないと思います。「蜜蜂と遠雷」は、実は今まであまりなかった作風で、SF好きなら「光の帝国」あたりを、推理小説好きなら「ユージニア」あたりを、読んでみられたらいかがでしょうか。