「愛と生を描く心温まる恋物語」君は月夜に光り輝く みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
愛と生を描く心温まる恋物語
本作は、心ときめくキラキラした恋物語ではない。愛すること、生きることの意味に真摯に迫る作品である。発光病という設定は特殊だが、ストーリー展開は極めてシンプル。不治の病に侵された女子高生と、彼女を支える男子高生の恋物語なので、生と死という言葉が飛び交うが、センチメンタリズムで終始せず、生の繋がり、生の連鎖を強調しており、従来の恋物語とは一味違う余韻に浸ることが出来る作品である。
本作の主人公は、発光病で入院中の女子高生・渡良瀬まみず(永野芽郁)と彼女の同級生・岡田卓也(北村拓海)。拓哉がまみづの病院に見舞いに行ったことがきっかけで、拓哉は、天真爛漫なまみずの願いを代行して叶えていくようになる。次第に二人は親密になり惹かれ合っていくが・・・。
前半では、まみずは入院しているが、病魔の姿は見えず健康な女子高生そのもの。卓也との屈託のない会話も自然だが、ふとした表情に憂いが宿り、彼女の抱えている闇が垣間見える。永野芽郁の役作りが効いている。明るく、意志の強い、どんな時でも前向きな、まみずをリアルに演じている。病室での二人の会話は徐々に弾んでいくが、後半になるまで、二人の座る間隔は1m弱でなかなか縮まらない。踏み越えたくても踏み越えることができない複雑で切ない二人の心情を巧みに表現している。
北村拓海も、訳ありで鬱屈した、不器用で心優しい卓也の想いを、台詞だけではなく、表情、佇まいで巧みに表現している。
後半になって、病魔と闘いながら、二人の距離は一気に縮まっていく。愛と死を強調する展開だが、本作は愛と死ではなく愛と生に力点を置いて二人を描く。その分、クライマックスの感動は薄れ、スッキリしない感が残るのは否めない。しかし、その方が、現実的な展開になったと得心できる。
本作は極めてシリアスな題材だが、心温まる余韻が残るのは、本作が、愛すること、生きることの意味を、真摯に描いているからである。