「☆☆☆★★ 愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃあなりません。 ...」君は月夜に光り輝く 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★ 愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃあなりません。 ...
☆☆☆★★
愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃあなりません。
原作読了済み。
監督自らの脚本らしい。一見すると多少の変更点を除けば、概ね原作通りの様には受け取れる。
…のだが、そこには大きな違いが!
原作自体がライトノベルの為に、はっきりとは描かれてはいなかったものの、主人公の卓也は…。
1番愛する姉に死なれてから、常に死を意識している日々を送っていた。
或る意味では、自殺願望を持つ青年で。その彼の前に、姉と入れ替わりに表れたのがまみずだったのだ!
【死を選んだ】愛する人と。【死にたくない】と願う女の子。人との触れ合いが苦手な彼が、新たに触れ合う事になった《死に行く》まみずから《生きる意義》を教えられる。
それを、極々普通の難病恋愛物として製作しているのは、う〜ん!どうだったのだろう?…と。
但し、それによって。話自体がより単純化され、「泣きたい!」願望の強い人からの指示は受けそうとは思えましたが…。
何処か、まみずと出逢う前は常に死を意識して居た自分だったが。まみずの存在が、自分の中で大きくなるにつれ。愛する人が出来た喜びと、その愛する人が(またしても)死んでしまう辛さ。
この狭間で揺れ動いて行く。
香山の存在も、映画・原作共に、姉の恋人の弟との設定はそのまま。だが、香山は本来。死を恐れずに、高所から平気で飛び降り。卓也の為に大怪我をした過去が在る。
恩義を感じている香山の、死を恐れぬ気持ち。
その過去を知るあまり。原作での卓也は、クライマックスと言える屋上の場面でまみずの為に自分も【死を選ぶ】のだが!
「私のかわりに生きて、教えてください。…あなたの中に生き続ける私に、生きる意味を教え続けてください。」
映画だけを観た人が。この場面での、このまみずの言葉を聞いてどう思うのだろう?
普通に恋愛映画として観たならば、なかなか感激する場面だと思える。実際に原作を読んでいても、この場面にはウルっと来たのが本音。
それもこれも。原作に於ける卓也が、自らの【死を賭けた愛する想いの深さ】が在ったから…の様な気がしている。
その意味では、この映像化に於ける薄味な仕上がりには少しだけ残念な気が否めず。この監督の作品には、これまでも今ひとつ…と言った感想を持っていましたが。今回もそんな思いは変わらずで、主演の若い2人に引っ張られて、何とか格好が付いた作品…と言ったところでしようか。
最後にどうでもいい個人的な話。
何気に優香の役柄がとても活きている…と思っていて、優香の演技もなかなか良いのですが。
個人的には、原作を読みながら小林聡美をイメージして読んでいた。
夜中に病院に忍び込む卓也を諌めては諭す場面。
映画ではあっさりと描かれていたが、原作ではかなりの長台詞で早口に喋り倒す。その姿が小林聡美のイメージに繋がっていました。
もしもドラマ化等の話が有った時には如何でしようか。
2019年3月15日 TOHOシネマズ日比谷/スクリーン12(旧スカラ座)