「細かいことは気にしちゃいけない、妄想ファンタジー」君は月夜に光り輝く Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
細かいことは気にしちゃいけない、妄想ファンタジー
子役から、ティーンファッション誌のトップモデルへ登りつめ、そして昨年上期のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」でヒロインを務めた永野芽郁(ながのめい・19歳)の主演新作。
主演は「ひるなかの流星」(2017)以来だが、2018年はメジャー作品の助演出演で着々とキャリアを積み上げてきた。直近も日本テレビのドラマ「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」で、菅田将暉と共演している。
本作は佐野徹夜の同名小説の映画化。イラストがセットになったライトノベルのスタイルで発表された。
不治の病"発光病"で入院している女子高校生・渡良瀬まみず(永野芽郁)。たまたまクラス代表として見舞いにきた同級生の岡田卓也(北村匠海)に、やり残したことを"代行体験"してもらうことで、徐々に心を通わせていく2人の恋愛物語である。
相手役の北村匠海は「君の膵臓をたべたい」(2017)が大ヒット。どちらかというと浜辺美波の勢いに引っ張られた形でのブレイクではあるものの、以降、メジャー出演が続く。本作も"キミスイ"と同じ月川翔監督である。
そもそも"発光病"という病気は存在しない。細胞の異常によって皮膚が発光、死に近づくにつれ、その光が強くなっていくという、ゲンジボタルの羽化ような妄想に付き合わなければならない。
高度先端医療の病院なのに、部外者が簡単に出入りできたり、スーパームーンの夜空に満天の星が輝いていたり(ふつう、満月の光で星は見えなくなる)、いちいち都合がよすぎる。本作は設定からして、リアリティをまったく重要視していないことが特徴。
逆に言うと、細かいところに目をつぶれば、構成要素は単純記号化されている。
"まだ若い女子高生が余命宣告される悲劇"
"死ぬまでにしたいことを列挙し、叶えていく"(よくある設定。恋愛もそのひとつ)
"それぞれが抱える家族問題の壁と、それを乗り越える"
これは、記号化コミュニケーションで共感する作品と考えればいい。自分のようなスレた大人には感動しにくいが、何にも考えずに直感でとらえる世代にはちょうどいい。
主人公はふわっと消えていくので、"キミスイ"のような骨太の涙もない。旬の永野芽郁を満喫するだけだ。
やはり人気急上昇中の今田美桜(22歳)が、メイドカフェ店員役で出ている。メイド姿も拝める。
(2019/3/16/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)