「鎮火不能!燃える面白さ!」プロメア 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
鎮火不能!燃える面白さ!
ほとんどどんな内容なのか知らずに鑑賞。
劇場公開時好評を博してヒットし、『天気の子』などと共に米アカデミー賞アニメ映画賞にエントリーされた事ぐらいしか知らず。
ジャパニメーションらしい何かのSF…?
監督・今石洋之と脚本・中島かずきのタッグは『天元突破グレンラガン』など人気アニメを幾つか手掛けてるようだが、見た事無い。中島かずきは脚本作(クレしん・ロボとーちゃん)なら見た事ある。
このタッグによるアニメ世界はほぼ初めましてだが、作風に掛けて言うなら、熱く燃える面白さ!
オリジナルのSFアニメは設定や概要をよく把握しておかないと話についていけなくなる。最初が大事。その話は…
世界中で突如人体が発火する新人類“バーニッシュ”が出現し、全世界の半分が焼失した大惨事から30年後。
“マッドバーニッシュ”を名乗る一部の過激派が再び人類の脅威に。
そんな放火テロの火災を鎮火する“バーニングレスキュー”の新人隊員ガロは、マッドバーニッシュのリーダーであるリオと対峙し…。
見始めは『X-MEN』…?
いえいえ、SF版『バックドラフト』…?
そしたらロボットまで出てきて…!
メカニックはどれも独特のデザイン。
激アツの主人公に個性的な登場人物たち。
主人公はロボットアニメの王道のようなバカが付くほど熱い猪突猛進のキャラ像と台詞の数々。
昔の火消しや歌舞伎のような“見得”を決めるなど、和のテイストも。
とにかく圧巻だったのが、OPバトル。
疾走感溢れ、スタイリッシュでド派手で、熱くて、そこにクールな音楽…。これで一気に引き込まれた。
ハリウッドが『スパイダーマン:スパイダーバース』なら、日本は『プロメア』だ!
監督×脚本コンビのやりたい事、好きな要素をこれでもか!…というくらい詰め込み、それが画面から漲っていた。劇場で見ていたらもっと圧倒されていただろう。
単なるド派手さだけが売りの作品に非ず。話の方も良かった。
人類の脅威のバーニッシュだが、勿論全てのバーニッシュがそうではない。
我々と同じく穏やかに暮らし、食べて生き、最期は灰となって命を終える。
寧ろバーニッシュである事を隠して生きなければならない日陰の存在で、常に差別や偏見の対象。
きちんとそれらも踏襲。
過激な手段に出るリオだが、決して人の命だけは奪わず。その手段にもある目的が。
ガロもそうだ。バーニッシュに対し差別偏見は無く、忌み嫌ってもいない。ただリオらが放火をしたらそれを消す火消し野郎。
度々ぶつかり合ったりはする。しかしそんな中でお互い理解し合い…というより、育まれる男同士の友情。これがまた熱い。
となると脅威となるのは、体制側。
バーニッシュを摘発する特殊部隊フリーズフォースこそ権力と武装力で脅かす。
一見ユートピアのような自治共和国プロメポリス。
司政官のクレイは幼いガロを救い、憧れの存在。
しかし…と、まあ、そこはお察しを。
黒幕は危険思想だが、考えもさせられる。
クレイが秘密裏に進めるある計画、そして知る衝撃の真実…!
バーニッシュの存在とは…? タイトルの“プロメア”とは…?
クライマックスは予想だにしなかった展開と壮大なスケールに!
クライマックスの展開やラストバトルはちと長さも感じたが、熱量で押し切る。
オリジナリティーやセンスも上々。タイトルや文字の表記の仕方もクールでユニーク。
松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人らの声の熱演。
松ケンは巧く熱く、早乙女もクールに熱く、堺雅人は某大ヒットTVドラマ以来の熱弁を聞けた。
大多数か、少数の犠牲か。
それとも、選ばれた者たちだけか。
そんな不審火は、この俺様が~許さねぇ!
世界一の火消し野郎とクールな燃える男に、文字通り鎮火不能で燃えた!