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「妻たちの落とし前」ロスト・マネー 偽りの報酬 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
妻たちの落とし前
『それでも夜は明ける』でアカデミー作品賞に輝いたスティーヴ・マックィーン監督最新作。
スタッフも超一流、キャストも超豪華。
話も面白味充分。
オスカーノミネートは逃したものの、前哨戦の映画賞ではちらほらノミネート(主に、助演女優・脚色・編集辺り)。
クオリティーは保証付き。
日本でも4月の公開が決まってたのに、突然の公開中止。
一体、何があった!? 劇中さながら不測の事態か…!?
夫を亡くした妻たち。
彼女たちの夫は、強盗団。計画が失敗、SWATと交戦となり、乗っていた車ごと爆発・炎上。強奪した大金と共に。
彼らが奪った金は、ある地元議員の選挙資金。
リーダーの未亡人ヴェロニカは、金の返済の脅迫を受ける。
そんな時、ある強奪計画が記された夫のノートを発見し…。
妻たちは夫が犯罪者である事を知らなかった。
妻たちも会う事は無かった。
ヴェロニカは妻たちを集め、ノートを元にある計画を実行に移す。
標的は、脅迫してきた議員のライバル議員。その邸宅に侵入して金を盗み、返済に当てようとするが…。
事情はどうあれ、夫たちに代わって犯罪に手を染める!
彼女たちには悲しみに暮れ、喪に服す暇や余裕など無い。
命の危険や期日が迫る中、
セレブ妻、生活苦の妻、DVを受けていた妻たちが強くなっていく。
人生を賭けた大勝負!
この手のクライム・ムービーは計画準備~実行が面白いが、本作も然り。
入念な準備、下調べ。
実戦備えての訓練。
ヴェロニカは厳しく堅物。他の妻たちから不満の声。
妻たちのやり取りはピリピリムードだが、うっすらユーモアも孕む。
遂に決行!
言うまでもなく、計画に不測の事態が…!
脚本に『ゴーン・ガール』の原作者ギリアン・フリンが参加。まさかの展開、どんでん返しは勿論。
『SHAME/シェイム』『それでも夜は明ける』などシリアス作品のスティーヴ・マックィーン初のエンタメ。
だけど、ただの娯楽作ではない。
政治と金。
人種問題。
妻たちそれぞれのドラマ…。
クライム・エンタメの中にそれらもしっかり織り込み、ドラマ性の見応えもあり。
作品自体や監督の手腕もさることながら、やはりこの豪華キャストの面々に唸る。
ヴィオラ・デイヴィスはさすがの存在感。
チームを組んだ妻たち。ミシェル・ロドリゲス、中でもエリザベス・デビッキはデイヴィスとの対峙や頭も芯も弱かったものの次第に逞しくなる見せ場があり、その美貌も映える。
コリン・ファレル、ダニエル・カルーヤ、ロバート・デュヴァル、リーアム・ニーソンら男たちはそれぞれ、標的や敵役や亡夫で脇固め。
にしても…、レンタル・パッケージがリーアム主演のB級アクション風なのはどうしたものか…。
計画の途中に現れた驚愕の“裏切り者”。ライバル議員とも繋がり有り。
全ては躍らされていたかのよう。
ヴェロニカにとっては信じ難い…いや、信じたくない。
図らずも対する事になるが…、
妻たちは引かない。挑む。やり遂げる。
これは、彼女たちそれぞれの覚悟、けじめ、落とし前。