劇場公開日 2019年6月7日

  • 予告編を見る

「ある女性の人生戯曲」エリカ38 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ある女性の人生戯曲

2019年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

わたしも以前、知人のツテで
今思えばいかにも胡散臭い
出資者を募る事業説明会に
参加したことがありました…

そのヒトたちは皆、生き生きとしていて、
おしゃべりがうまくって、インテリ風で、おしゃれで、
インポート車に乗っていたりして…
そこにはわたしの知らないきらびやかな世界が
広がっているような錯覚に陥り
少し憧れる自分が、そのとき、確かに存在しました…
彼らは口々に「夢」を語り
また当時のわたしの「夢」を聞いてくれましたが
元来あまのじゃくのわたしは嫌悪感が先立ち
最終的には拒絶しましたが…

出資も宝くじを買うような
「夢を買う」行為に似ている

ヒトは何かに夢を投影したり、夢を託そうとする
だからなのか…
ヒトの虚栄心を利用した犯罪はなくならないし
そんな利用されたヒトでさえ
一方的に詐欺犯を糾弾しないヒトも
一定数いらっしゃるのも、また事実…

劇場でロングラン上映して頂いていることもあり
なにより、樹木希林さんの息が掛かった
最初で最後の作品ということで
ハンカチ持参で鑑賞に臨んだ
本作『エリカ38』でしたが…
完全にわたしが思い描いていた物語とは真逆の!
なんとも言えない女性の一面、人生の一幕を
表現した強烈な作品でした!

うまく言葉にできないんですが
なんかロシアの劇作家「アントン・チェーホフ」の舞台演劇…
そう、人生の一幕を表現した〈戯曲〉みたいだなと
わたしは感じました。

さしずめ、
発端 PROLOGUE
監禁 INPRISONMENT
逃亡 ESCAPE
3幕からなる悲劇、女性戯曲とも言うべきか…

チェーホフ作品群の登場人物たち…
人生を悲観して、笑う者、怒る者、泣く者…
そして、堪え忍ぶ者、命を絶つ者…

そんな、やりきれない悲劇や
見方によっては幸福な喜劇にもなりうる
なんとも深みのある、おもむきのある作品でした!

浅田美代子さんの女優経歴を更新するような好演!
木内みどりさん、菜葉菜さん、しずちゃん、
そして希林さん、とにかく女性陣の演技に
目を惹かれました!

不意討ちみたいな形とは言え完全にナメてた!
誰がなんと言おうとも
わたしの今年ベスト級作品です!

『新聞記者』『ウィーアーリトルゾンビーズ』
『岬の兄妹』『赤い雪』『凪待ち』 etc.
あくまで個人の主観ではありますが
なんか今年は「問題作」「衝撃作」
な映画が多い?ように思った今日この頃…

野々原 ポコタ