劇場公開日 2019年4月19日

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「どこの層にオススメしたらいいのか」キングダム まつさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0どこの層にオススメしたらいいのか

2020年7月28日
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漫画原作映画のレビューで「原作へのリスペクトが無い」という意見がよくある。
キャラクターやストーリーの解釈が原作からかけ離れてしまうからそう言われるんだろう。
今回のキングダムも信が主人公なのに主人公らしからぬくらいの薄味。
漫画の信の周囲を引き込む情熱とか時々見せる鋭さとか底知れなさとかいい面が全部無くなって、悪い面のうるさい馬鹿ってとこしか合ってなかった。
2時間程度で話を詰め込まないといけないからたくさん端折らないといけないとわかってはいるんだけど、そこのシーンよりここのシーンの方が大事じゃない?何でそういう展開にしたの?そこにそんな演出とかいる?そこにそんなに時間かける?と、2時間の時間配分に疑問符だらけだった。

じゃあ、漫画と切り離して歴史映画として見れば面白いかも、と考えたけども、歴史映画として見ると漫画的演出が恥ずかしい。
暗さとか凄さとか壮大さとか、これぞ大画面の利点!というべき状況を視覚で捉えさせる演出を、漫画から抜粋した台詞に全部委ねてしまって、映画の良さが死んでる。
緊張感も高揚感もいまひとつになる。
どっちに転んでも中途半端な出来だった。
その台詞入れれば漫画ファンが喜ぶと?
いやいや、漫画ファンから見ても映画ファンから見ても違和感しか無いよ。

でもそんな内容でも売れてるから、こういう映画が量産されちゃう。
漫画原作映画の闇ってそこなんだよ。
「売れてる漫画」を利用した「役者の為の映画」になってる。
誤解を招く言い方だけども、役者の演技力はちゃんとあるし役作りもしっかりしてるのはよくわかってます。
でも、映画館に足を運ぶのって漫画ファンと役者ファンであって、映画ファンはどれだけいるんだろうって話。
例えばMCUは漫画原作の映画で大ヒットしたけど、アイアンマンというコミックスの人気とロバート・ダウニー・ジュニアの人気がもたらした成功じゃなかった。
アメリカ国内でスパイダーマンとかスーパーマンなんかに比べたらほとんど日陰みたいなヒーローの映画がヒットしたのは、映画が面白かったからだと思う。
役者はほとんど無名の人が選ばれてるのにヒットした。
キャップだってキャップを演じる前からファンだった、なんて人、どれくらいいる?
役者に役名が定着するくらい映画が成功を収めた。
今ではロバート・ダウニー・ジュニアといえばアイアンマンだよね。
役者の名前より先に役名が出て来る。
映画によって役名の方が売れるっていう現象は果たして日本でどれくらいあるかな?
漫画ファンは銀幕を見て、「今のは漫画と違う」「今のはこのキャラっぽさが出てた」っていう目線で見る、役者ファンは「こういう役をやってもかっこいい」ていう目線で見る。
映画という目線で見てる人がどれだけいるんだろう
日本人だっていい映画は撮れると思うし、きっといい映画は今も産み出されてるに違いない。
けど、映画そのものには集客力が足りない。
映画というコンテンツは役者や歌手を宣伝する2時間のプロモーション映像で、漫画やラノベがそれに利用されるツールになってる。
それが一番ヒットして儲かる。

良作の映画ってのは10年後も20年後も30年後も愛されていつ見ても面白い。
映画が永く愛されるキャラクターを生み出す事もある。
キングダムという漫画は素晴らしいし、ワンオクは最高のバンドだし、吉沢亮や橋本環奈は素敵な俳優だ。
でも、キングダムという映画は駄作だ。
漫画ファンにとっても、役者ファンにとっても、映画ファンにとっても、どこの層にも語り継がれる傑作にはなり得ない。
キングダムは、観客が銀幕を眺めながら役者の名前や漫画のコマを頭に浮かべている事に良しとしてる、ただの集金コンテンツです。

まつ