「大沢たかお版『バトルフィールド・アース』」キングダム よねさんの映画レビュー(感想・評価)
大沢たかお版『バトルフィールド・アース』
時は春秋戦国時代。戦災孤児となった信はとある農家に奴隷として売られ、同じ孤児の漂と出会う。2人はすぐに意気投合し天下の大将軍になることを夢見て農作業の合間に剣術の修行に明け暮れていた。そんな2人の姿を見つけた秦国の大臣、昌分君に王宮に仕えるよう誘われる漂は信との別れを惜しみながら農家を去る。ひとり黙々と修行に励みめきめきと剣術の腕を上げていく信。そんな彼の前に突然満身創痍となった漂が戻ってくる・・・からの歴史アクション。
・・・しょーもな。
原作の表紙も見たことない人間なので正直的外れな感想だとは思いますが、まずは漂と信の修行から。子供が木の枝を振り回してチャンバラごっこしてるだけで強くなるってちょっといくら何でもご都合主義がキツくないですか。で、まあセリフが全部現代語の日本語ってのも原作がそうなんでしょうからしょうがないよなと思って思考停止して観てたんですけど、漂が信に去り際に放つセリフ「稽古、サボんなよ!」・・・紀元前に産業革命以降にしかあり得へん言葉を使う無神経さに鼻腔にこってりチョコミントでも塗り付けられたかのような爽快感が大脳を突き抜け、あとの話は全部やっつけ仕事やなって覚悟しました。
あとこれはもう演出が悪いんやと思うんですが、若い俳優のテンションがとにかく嘘くさい。この辺は原作を知ってる人なら気にならへんのかもですが、冒頭から漂と信の友情を丁寧に描けへんから、漂の死に怒りを燃やす信が空回りしてるようにしか見えへんし、もっと大きいところ、成蟜が嬴政を憎む理由もおかんが舞妓やからってだけ、そんな理由?というか今“舞妓“って言うたよね?紀元前の中国に舞妓?え、聞き間違い?いやもうなんかねイチイチ気になって話に気持ちが入って行かへんねん。だからとりあえず声張っとけっていう演技はどこぞの山の上でやってくれ、メンド臭くて登山をしない俺らにヤッホーって言わせないで欲しい。あと前半でやたら多用されるスターウォーズっぽいチャチいワイプ。あれもやる必要なかったね、オマージュなんやろけど。
そんな枝葉末節も肝心のアクションがしっかりしてたら全然カバー出来るんですが、ここも全然物足りへん。まずモブシーン、エキストラを1万人動員したとか宣伝してましたけど、秦軍の兵士は8万人言うてたから全然足りてへんやん。結局CGで7万人増やしてるやん。それやった全部CGでええやん。エキストラの数自慢するなら8万人呼んで欲しい。というか『ボヘミアン・ラプソディ』でウェンブリースタジアムを埋め尽くした観客を演じたエキストラは900人やから。今は中途半端な人海戦術はへぇ〜以上の感想は出ないです。格闘シーンもなんかピリッとせんね。百戦錬磨のアクション監督下村雄二の演出とは思えないハンパさなので撮影時間がそないなかったんかも。こんだけスターキャスト集めてたらスケジュール調整大変やろしね。あと騎馬シーンもあかんかったなぁ。上半身アップでCGで馬上感出すとか要る?あれは丸ごとなくてもいいやつ。あとねぇ、色々予算かけてるのは分かるんやけど、ヅラと付け髭はもうちょっとお金かけてよかったんちゃうかな、イチイチ生え際が気になって目障り。
で、何だかんだで一番あかんのは伝説の大将軍王騎を演じる大沢たかお。そもそもそんなに大物感ある役者さんちゃうから、なんか下駄履かせてる感がえげつない。見せ場も大鉈を振り回して雑魚を数人殺すだけ・・・ブルース・ウィリスが『G.I.ジョー バック2リベンジ』でピックアップトラックの荷台からマシンガン掃射で3人くらい雑魚を倒して退場したのを思い出しました。で、なんか物凄い既視感あるキャラクターやなっとずっと思ってましたが、これ、あれやね、世紀のクソ映画『バトルフィールド・アース』のジョン・トラボルタのコスプレやね。
まあ要するにCM以上の見せ場がないというクソ映画のテンプレをバカ丁寧になぞる律儀さに「なんか色々大変やったね」と言いたくなるやつでした。こんなんわざわざ劇場公開せんとハナから地上波で放映して下さい。あと最後のワンオクもジャマ、ええ曲やとは思うけど麻婆豆腐にパルメザンチーズかけるようなもんです。
それでもギリギリ映画の体裁になってるのは、昌分君を演じた高嶋政宏の圧倒的な貫禄。昨年絶賛した『空母いぶき』での熱演とは異なるテンションでキャラクターに命を吹き込んでました。これから作るらしい続編は昌分君が主役のスピンオフでええんちゃうかなと思いました。