「壮大なサーガが幕を開けてしまった。はやくオカワリください。」キングダム Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大なサーガが幕を開けてしまった。はやくオカワリください。
2006年から連載中(週刊ヤングジャンプ)の同作品は、最も実写化が待ち望まれていた作品のひとつだ。
紀元前245年の中国春秋戦国時代。のちの始皇帝となる秦王・嬴政(えいせい/吉沢亮)と、奴隷孤児から武人に成り上がる主人公・信(しん/山﨑賢人)の活躍を描いている。のちに信は、秦の大将軍・李信となる。
日本人による中国時代劇というハンディキャップは否定できない。しかし、日本で出版された「三国志」や「西遊記」のアレンジしかり、史実をベースに和風の味付けがなされていることは当然で、原作漫画を含め、これを本気で"中国時代劇"と思い込むのはどうかと思う。
むしろ"大義"のもとに繰り広げられる政争、人間の営みを楽しむタイトルである。そして映画化の最大の課題は、中国戦国時代のスケール感をどこまで再現できるか。これに尽きる。
事前になかなか原作50巻を読み始める気概もなかったものの、本作品の満足度は及第点をはるかに超える。佐藤信介監督、スタッフ、出演者の努力に頭が下がる。
剣・矛・盾によるダイナミックな殺陣は、スピードを伴うクレーンカメラやワイヤーアクションも組み合わせて、観客を圧倒する。
現代的な殺陣といえば、佐藤健主演の「るろうに剣心」シリーズ(2012/2014)のハイスピード殺陣にも感心したが、本作は参加人数や設定舞台のスケール感でそれを超えてきた。
山﨑賢人の絞りこんだ肉体と体当たりのアクションは力強い。主人公の幼なじみの漂(ひょう)と瓜二つの秦王の2役をこなす吉沢亮のクールな演技も魅力的。
さらに女性ながら山民族の王・楊端和(ようたんわ)を演じる長澤まさみの動きは、「ワンダーウーマン」(2017)を彷彿とさせるカッコよさ(参考にしていると思えるほど似ている)。
そして何といっても、主人公さえも喰ってしまうほどの存在感を放つ、秦国六大将軍のひとり王騎(おうき)を演じる大沢たかおが凄すぎる。
本作の唯一の弱点があるとすれば、エンディングと同時に、"次が見たくなる"衝動だ。
本作にあたる原作部分は1~5巻まで。あと45巻分も残っている(しかも連載継続中)。ヒットしなければ次作のない映画興行の世界で、壮大なサーガが幕を開けてしまった。たいへんだ。
はやくオカワリください。
(① 2019/4/20/TOHOシネマズ上野/シネスコ)
(➁ 2019/4/29/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)