「ヒリヒリ感と痛烈な痛み・・・」Girl ガール りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
ヒリヒリ感と痛烈な痛み・・・
15歳のララ(ヴィクトール・ポルスター)はバレリーナを目指すトランスジェンダーの少女。
肉体的には男性だが、現在は第二次性徴を停める治療をし、手術に備えているといった状況。
バレリーナとしての才能もあり、難関のバレエ学校への編入が認められ、父と弟とともに、学校近くへ越してきたところだった。
バレエ学校での練習は、文字どおり血のにじむもの。
やはり、肉体的なハンディキャップは大きく、他の生徒と比べて、練習の開始が遅かったことがある・・・
というところから始まる映画で、映画は主人公に文字どおり肉薄するような映像で綴られていく。
特に、バレエのレッスンシーンが顕著で、ベルギーの著名なバレエダンサーに振り付けを依頼したのだが、その振り付けの全貌はみることはできず、ララの躍動する(もしくは、できない)姿を表情を中心に捉えていきます。
このバレエシーンが素晴らしい。
演じるヴィクトール・ポルスターは心も身体も男性の新進ダンサーということだが、衣装も違えば、振り付けも男性のそれとはやはり違うのだろう。
上手く踊れないシーンなども、まさしく踊れない感が如実に出ている。
物語は、ホルモン療法によって第二次性徴を停めたララが、それでも肉体と精神のバランスを取ることにストレスを感じ、最終的には痛烈な痛みを伴う決断をするのだけれども、その決断に至るまで、やはり心の中では「引き裂かれた」ような思いを抱えていたことが描かれる。
父親も医師たちもララに寄り添い、理解して、ともに進んで行こうとするのだが、それでもやはり、周囲のすべてのひとびとが彼女の側に経っているわけではない。
転校先のバレエ学校ではない普通科の学校でのクラスメートのなかには、思春期ゆえか男性としてのララの肉体に興味を持つ女生徒もい、その偏見の眼がララを傷つける。
さらに、バレエでの上達のもどかしさも、ララの内部では大きなストレスになっている・・・
そういった思春期特有のヒリヒリ感。
それがあった上での、最後に描かれる痛烈な痛み・・・
胸に刺さるものがありました。