劇場公開日 2019年11月2日

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「魔力のある映画」象は静かに座っている ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0魔力のある映画

2021年2月21日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

1中国の地方都市で暮らす、トラブルを抱えた4人の男女が、ある共通の場所に向かう姿を描く。

2ストーリーは、4人の男女にそれぞれトラブルが発生し、いずれもが苦悩・絶望し街を彷徨い、その最中に偶然ある場所のことを知り、救いを求めるかのように其処に向かう 。
4人のエピソードが時間の経過とともにほぼ順番に描かれるが主人公ともいうべき男子高校生を核に、4人が劇中で関わっていく。

3 演出面での特徴的なこととしては、➀各シーンが長回しでカットや登場人物のセリフが少なく、動きやセリフの間がゆったりしていて、そのテンポの緩さから最初は投げ出したくなること。②フィルターを掛けて撮っているのか?色合いが終始暗色がかっていて話の内容に合わせたかのように陰鬱である。③パンフォーカスしていないため、中心の被写体以外がピンぼけしており、視野の狭さを暗示しているのだろうか?

4とても暗い映画であり、4人の置かれた状況は救いがたく、また街を漂流する姿は絶望感に満ちている。それは、現在の中国の市井の人々が耐え難い諸問題(喧騒でごみごみした都市生活、埋めがたいほどの貧富の格差の拡大、高齢者の孤独、中央政府に統制され自由のない社会体制・・・)を抱えながら生活せざるを得ない現況を表しているかのように覚える。

5この映画は、最初の苦痛の時間を我慢して見続ければ、次第にテンポに慣れてきて話の構成もスリリングなものになり、4時間超えの長尺だけど旅の最後まで見届けようとさせる、そういう魔力がある。

ショコワイ