劇場公開日 2019年11月2日

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「フー・ボーは静かに訴える」象は静かに座っている 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0フー・ボーは静かに訴える

2020年10月20日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

友人を庇って不良を誤って階段から突き落としてしまった少年。
その不良の兄で、幅を利かせている男は少年を捜す。
教師と深い関係にある、少年らと同じ学校に通う少女。
近所に住む家族から見放された老人で、唯一の心の支えだった愛犬が近所の狂犬に噛み殺され…。
かつては炭鉱業が栄えたものの、今は廃れた中国の田舎町。
しかし廃れたのは、町だけではなかった。
彼らが抱える苦悩、怒り、悲しみ、模索、閉塞感…。
そんな喘ぎ、もがき、どうしようもなさが画面からひしひしと伝わってくる。
何か彼らに救いや希望は無いのか…?
あった。
遠く離れた地の動物園で、一日中座り続けているという象を見に行く。
何でもないというより、ヘンな事かもしれないけど、見ればきっと、何かが変わる…。

4人のある1日の心の彷徨。
じっくりと描き出す。4時間の長尺で。
彼らと共に苦しみ、悩み、救いを求めたのは、真の主役と言える監督のフー・ボー。
中国新世代期待の監督“だった”。
小説家や幾つかの短編映画を発表し、本作で長編作デビュー。
その直後、29歳という若さで自殺。
何があったか分からない。
が、どうしても、本作のテーマとフー・ボー自身がリンクしてならないのだ。
ラストシーンの象の鳴き声など、この世に訴えるフー・ボーの声そのものに聞こえた気がした。

正直、自分には敷居が高い作品だった。
引き込まれた部分もあったが、4時間という長尺故時折集中力が途切れ、眠気にも襲われ、何度か休みながら見、終始一気見は…。

もし、この若き名匠が自ら命を絶たなかったら、将来はどれほど世界を代表する名匠になっていただろう。
フー・ボーが最初で最期のこの長編作品に込めた魂は、静かながらも永遠に映画史に残り続ける。

近大