「男たち、女たちの贋札」プロジェクト・グーテンベルク 贋札王 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
男たち、女たちの贋札
中国や香港で大ヒット、国内で多くの賞を受賞するなど高い評価を得、韓国でのリメイクも決定。
日本公開前から実は結構気になっていたアジアン・クライム・ムービー、評判違わぬ面白さだった。
タイの刑務所から香港警察へ身柄を拘束された男、レイ。
彼は、世界的贋札造り組織のメンバーであった。
組織からの報復に怯えながら、取り調べを受ける。自身が関わった経緯、“画家”と呼ばれるチームリーダーの事…。
時を遡り、90年代のカナダ。
恋人との安定した生活を夢見るレイ。が、才能を認めて貰えず、“主役”になる事は夢のまた夢…。
生活の為に、贋作に手を染める。元々腕はいいので、本物と見紛う出来映え。
そんなレイの前に現れたのが、“画家”。自身の組織にスカウトする…。
実在の事件に着想を得たという本作。
先日NHK-BSの番組『ダークサイド・ミステリー』でも実在の贋作画家の数奇な運命を取り上げていたが、共通している事がある。
画家として大成出来るのはほんの一握り。中には、死後数百年も経って伝説になる画家も。よほどの才能と運がない限り無理。絵画の世界の事など知らない自分が言うのも何だが。
本当は画家として大成したかったのに…、ある一時の魔が運命を狂わす。
そしてそれが延々と、もはや後戻り出来ず、深みにハマり…。
この世界でこそ、自分はやっと認められ、“主役”に。
贋札製造の過程は不謹慎ながら、興味津々。
勿論犯罪だが、芸術レベル。
と同時に、“本物”にしか見えない完璧レベルの“偽物”が最先端の対策をかいくぐって造られ続けるから、こうした犯罪も永久に無くならない恐ろしさ。自分もひょっとして、知らぬ内に世に氾濫する偽札に一度は触れた事あるかも…。
単なる偽札題材に非ず。
スリリングな取引、駆け引き、裏切り、騙し合い…この手の作品の必須要素!
それから、これ本当に偽札題材のクライム・ムービーだよね?…と思うくらい、ド派手なアクション・シーンも。
ガン・アクション、大爆発、バイオレンス…かなり迫力ある見せ場にもなっている。
ちと人間関係…特に男たちを取り巻く女性たちがこんがらがるが、エンタメ性も抜群!
“画家”チョウ・ユンファの存在感は言うまでもなく。あの出世名作を彷彿させる二丁拳銃やショットガンをブッ放す出血大サービスも!
『ワイルド・スピード』で例えるなら、ユンファがドミニクなら、ブライアンはアーロン・クォック。
偽札造りの世界にハマっていく…。
“画家”や組織メンバーと友情を育んでいく…。
特殊な用紙やインクを手に入れる為なら殺人も厭わない“画家”。
“掟”は絶対。
次第に“画家”に対して怖れを募らせていく…。
本来の画家としての苦悩…。
恋人の存在…。
実質主役みたいな立ち位置で、“色んな”意味で旨味のある役回り。
監督は『インファナル・アフェア』シリーズの脚本家、フェリックス・チョン。
そう、ストレートなクライム・ムービーを作る訳がない。
どんでん返し!
これには素直に騙された~!
レイが警察に話していたのは嘘で、あのOPシーンから予測するに“画家”が助けに来て、これは全て作戦だった…というのはよくあるパターン。
本作はちょっと捻り。あのOPシーンは“そのまんま”。
答えみたいなもんだが、ネタバレチェック付けるので触れるが、『ユージュアル・サスペクツ』的。
そう言うと既視感あるかもしれないが、これはこれで面白く、OK!
やはりもう一度見返したくなるほど。と言うか、再見してしまった。
内容的に“男たちの偽札”な感じだが、先にも触れた通り、女たちの存在も絡む。
男と女、求めた真の愛…。
“画家”は警察や世界を手玉に取った。
でも最後、愛憎とでも言うべき感情で“画家”を翻弄したのは、寧ろ女たちであった…。
(華のあるアジアン・ビューティーなのも宜し)