「桶?」メランコリック なつさんの映画レビュー(感想・評価)
桶?
とりあえず、カースト底辺は同窓会で草を食べる。
東大まで行ったのに〜は百万回聞かれてるけど答えられないカズヒコ。
一般家庭でぬくぬくと少し腫れ物扱いとして育ちバイト三昧な日々。
ある日同級生のユリと偶然風呂屋で再開し、流れでその松乃屋で働くことに。
ユリに一人暮らしぃ?!って食い気味にくるカズヒコのキモいことキモイこと。
そこにはオーナーのアズマじぃちゃんと濃い顔のコデラさん。同期で入ったマツモトくん。この子がすごい頭悪そうなのだけど、きちんとカズヒコの事も目上として丁寧に話し、縦社会に生きてる子なんだなぁ…
そこで見つける死体処理。
釜の火を見ながら、よく燃えてますねぇとポツリ。
あぁ、ここで道を外すのか。
特別手当を貰ってウホーイってデートに誘うとか狂ってる。
それにより承認欲求が満たされて、人生順風満帆…ではない。東大卒でど底辺生活で彼女もいない、コミュ力もないのは自尊心が高い分なににでも縋りたかったのかもしれない。
今作はとにかくテンポ良く、キャラクターもしっかりしているのでとても観やすい。
銭湯と死体処理と言う謎展開も、そうねその方が綺麗にできるしね。と謎の説得力をもたせてくる。
カメラのアングルなども、ほぼキャラのアップで他は背中や別アングルで撮るだけで距離が縮まらない。
食事シーンも両親とカズヒコの間にはボーダーがあるようで、ユリとの食事シーンも同じカメラには入らない。
その分目の演技やカズヒコのメガネに反射する光景など。
マツモトがタナカに出会って、あー、来ちまったよって目の動きがわざとらしくてとても好き。
死体処理がマツモトの方が主導を持っていたことが受け入れられないカズヒコ。
しかし、コデラの死によって2人は急速に距離を縮める。並んでお風呂で話をする2人はすでにバディのよう。
マツモトがタナカに引き渡され、カズヒコの処理をどうするかを話し合っていた間、彼はのほほんと彼女と幸せな時間を過ごしている。
なんならタナカ暗殺の計画後、マツモトが銃のレクチャーをしてる構成がじっくり楽しいBGMだしその後の2人の居酒屋のシーンはとても良かった。
黒組織と一般家庭との異種文化交流みたい。飲酒運転か、なるほど〜。
食事シーンもほとんど映らないのも好ましい。
家庭でも居酒屋でも何を食べてるのか分からない。
その分、必死にうどんを啜るマツモトに良かったねと思えた。
唯一出てたケチャップまみれのオムライスはケチャップだったね。
一般家庭に銃で撃たれた人が帰ってきて、救急車呼べなくて、とりあえず手当をして食卓囲むとかまるっきりファンタジーだし、ボーダーだった間にマツモトが座る事で輪になる。
銭湯もみんなで囲み、輪になる。
幸せと呼べる一瞬のために生きる。幸せってのはそういうものなのだ。
これでいいじゃん、いいって言えよ!って感じをゆる〜く思わされる謎作品でとても好き。
そもそもみんな黒なのに足洗ってその場所で家族営業っぽくするの無理だからね?
結局、カズヒコとマツモトの友情ストーリーでしたね。