劇場公開日 2020年1月3日

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「髪の毛の艶、爪の傷」虐待の証明 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0髪の毛の艶、爪の傷

2019年12月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

淡々とした空気は保ちつつ、心沈む虐待描写と胸揺さぶる人間模様に強く打たれた。
過剰にドラマチックにならないことで、強烈な出来事と心情がとても際立っていた。

虐待されて育った子供の人生、その行く先とは。
自分の子供に同じことをしてしまう者、被害に遭っている子供を見捨てられない者。
虐待をして育てた大人の人生、その辿り着く先とは。
自分のしている事に気付いて離れる者、事の悲惨さから目を背ける者、開き直る者。

虐待に関わる様々な立ち位置の人間を目の前に置かれ、問題を真正面から突きつけられる。
事件になり表面化されるケースなんてほんの一握りで、見えないところに暴力の連鎖が蔓延っていることを実感させられた。
絶対に許されないことだけど、ただ切り捨てるだけじゃ何も変わらない。

重いテーマを繊細に描いた作品だけど、しっかりサスペンスとしてストーリーを運び、緩急のついたスリリングな映画に仕上げたつくりが見事だった。
身内に刑事がいると何かと便利。
ハラハラするシーンも多く、どうなってしまうことかと読めない展開が面白かった。

しかめっ面に笑顔が浮かんだとき、どうしようもなく泣いてしまう。
髪の毛の艶感から伝わる健康状態。
人の心の悪い部分が剥き出しになっていたけれど、その反面、良い部分を信じたくなる。

何をしていても暗い表情のミス・ペクことサンア。
子供を相手にもう少し愛想良くできないものかと少し思ったけど、その奥にある情にジウンは気付いていたのかな。
微かでぼんやりした形で酷く揺れ動く、それでもたしかに存在しているあたたかいもの。

オールナイト上映の二本目という、寝落ち危険時間帯だったけれど、全く眠くならない映画だった。好き。

KinA