劇場公開日 2019年2月22日

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「ウチのカレーが一番なんだからッ!!」母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ウチのカレーが一番なんだからッ!!

2019年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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幸せ

《まだ見ぬ我が子へ》宛てた手紙は
子供の頃の自分自身にも宛てたものであると同時に
今まで母に甘えていた自分と決別して前を向いて
生きていこうという決意表明である…
と、わたしは受け止めました。

そもそも、ヤスケンさん演じるサトシのモノローグが
一体誰に向けられて語られているか?受け止め方で
作品に対する印象が変わるかもしれません。

さて本作『母を亡くした時、
     僕は遺骨を食べたいと思った。』は、

このタイトルが “ 過去形 ” であるように
母が亡くなってからが本題!

そして、わたしの知っている大森監督らしさが
出てくるのも後半以降。

父、兄、そして主人公である弟、
残された三人〈男たち〉のやり取りが
家族の絆と、亡き母の愛をより明確に映し出す。

家族なら必ず訪れる出来事を通過儀礼として受け入れ
悲しいけれど決して後ろ向きで居続けず
故人から注がれた愛情だったり
向けられた眼差しの奥に込められた想いを
ちゃんと受け止め、そして次の世代に繋げる。
連綿と続く生命のバトン…

 生き物は皆、病の種を身に潜ませて生きている。
    生の中には、必ず死が潜んでいる。
    それでも、そうして生きるしかない。
   か細い命の糸を切られてしまわぬように、
      懸命に糸を繋ぎ直しながら…
      生まれて、消えるまでの間を、
     哀しみと喜びで満たしながら…
    時に、他者に手をさしのべ、そして、
   また、自分も他者の温かい手で救われて、
     命の糸を紡いでいくのだ。

──上橋 菜穂子 著 『鹿の王』より抜粋引用

順番通りじゃなくても
早かれ遅かれ生き物はこの世からいなくなる…
でも、“個”が亡くなっても
“集団”であるその種は存続するだろう。
しかし、“個”の繋がりが“集団”である以上
個人(故人)が遺したものはきっと、ほんのわずかでも
種に反映されていると、わたしは信じています。

近年におけるわたしの映画好きを
再燃させてくれた作品、大森 立嗣 監督作品『光』
世間一般、皆さんの評価はイマイチですが
前衛的なその映像、その音楽が
わたしの感性に、どストライク!
ですが前作『日日是好日』も良いお話しでしたが
取り扱ったテーマからして淡々とした印象でした。
そして次回作『タロウのバカ』は
大森 監督が長年暖めてきた作品だそうです。
ぜひとも!評価を気にせず、
意欲的でぶっ飛んだ演出を期待します!

野々原 ポコタ