「深刻な社会問題ほど、笑いを交えて語れるといい」テルアビブ・オン・ファイア しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
深刻な社会問題ほど、笑いを交えて語れるといい
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パレスチナ人、イスラエル人、どちらにも大人気のTVドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』。主役のパレスチナ人女スパイの恋のお相手は、同志の活動家と、イスラエル軍の将軍。どちらの陣営も勝手な期待を抱いてドラマの行く末を見守る中、製作陣やスポンサー、女優の我が儘も加わって、ドラマの脚本家はてんやわんや。やがて選んだ物語の収束とは…。
世界で最もセンシティブにして解決不可能と言われるパレスチナ・イスラエル問題を、このように笑い混じりに取り上げる事ができるとは!
人種、歴史、宗教、各々の事情が複雑に絡み合った両国の感情を、ドラマの内容というワンクッションを置いて、適度な距離感で表現。ドラマの台詞の端々やキャラクターの持つ背景、民族を越えた恋愛要素で、互いの繊細な思いを浮かび上がらせた。
また、製作陣や視聴者の、戦争体験や民族感情から来る各々の意向にドラマの行く末が振り回される様子に、不透明な中東情勢を重ね合わせ、滑稽な中にも深刻な現状を伺わされる。
「-闘いは続く-」
ドラマはまだ終わらない。両国のいざこざもまた然り。
扱うテーマは重く複雑だが、それとは別に、フラフラと人生指針の定まらない若者が、脚本家としての技量や責任感、片想いの女性との関係を育てていく、スタンダードな成長物語としても、肩肘張らずに楽しめる。
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