「Elvis has left the building」アマンダと僕 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
Elvis has left the building
エンドロールの曲が「監獄ロック」をスローにしたような曲で、まさしくタイトルも「Elvis Has Left the Building」だった。母親サンドリーヌに教えてもらった言葉で「エルビスは建物を去ったよ」から「もう終わったよ。あきらめな」という意味になって、アメリカではよく使われるフレーズとなったようだ。
ダヴィッドが姉を失い、7歳になるアマンダが遺された。親権を巡っては裁判官の前で親族会議を開いて後見人選びをしなければならないとかややこしい現実。祖母にあたるアリソンはロンドンでダヴィッドとは疎遠だし、他に当てもない。施設に入れることも考えたが、やがてアマンダへの愛情も強くなり、2人の絆が深まっていく・・・
テロは何も生まない。悲しみを増やすだけだ。友人のアクセルだって負傷し、ピアノ教師である恋人レナも重傷を負った。レナに至っては右腕負傷なので、リハビリしてもピアノが弾けるかどうかわからない状態。レナは「私といたってつまらないでしょう?」と言い、ダヴィッドから身を引こうとまで考えていたのだ。
とにかくダヴィッドの悲しみは癒えないし、平静を装っていても突如号泣。アマンダにしても気強い態度を見せるが、母親のいないことに戸惑い、やはり泣き出す。彼らに希望はあるのか?とまで観ている者でさえ崖から突き落とされる心境になってしまうのです。何しろ24歳の僕と7歳のアマンダ。生活するだけでも大変なのに・・・
みんな泣きの演技が上手い上に、テロに晒されているフランスの状況も痛いほどわかる。世の中不条理だらけ。生前のサンドリーヌがモンスターペアレンツに訴えるぞ!と脅されたり、ホームレスがいたり、「搾取されてるのね」というレナの言葉からも庶民の生活が苦しい事情も伝わってくる。だからといって諦めちゃダメだ。ウィンブルドンの敗色濃厚な選手が徐々に点を積み重ねていく姿に希望を見た。
そうなんですよね〜。
「エルビスは建物を去ってしまった」の意味をお母さんが教えてくれるシーンから、最後のウィンブルドンを観るシーンまで、一気に思い出しました。
あ〜、いい映画だったなあ。
思い出させてくれて、ありがとうございました!