「金木を食った月山」東京喰種 トーキョーグール【S】 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
金木を食った月山
原作未読ですが、アニメ版で魅力に触れ、前作はもちろん鑑賞しました。窪田正孝くんの迫真の演技、VFXによるバトル等で東京喰種の世界観を構築し、大泉洋さんや鈴木伸之くんらが脇を固め、メッセージ性のある良作に仕上がっていたと思います。ですから、続編となる本作も期待して鑑賞してきました。
本作のキーパーソンは何と言っても月山習。その月山に扮する松田翔太さんの演技が、とにかく全方位的にド変態(褒めてます)!ナルシスティックで上品な振る舞いの隙間から、抑えきれない欲望がこぼれてくるような演技が、本当に気持ち悪かったです。もう本作は、彼の変態ぶりを鑑賞するための作品といってもいいでしょう。
しかし、困ったことに、月山のインパクトが強烈すぎて、他のキャラの存在が薄まり、その心情が伝わらないというか、あまり入ってきませんでした。そのため、人肉を食うことへの葛藤、グールとして生きる苦悩、グールと人間との共存、生への執着、異なる主義主張と他者理解など、前作に込められたような様々なメッセージが、本作からは強く伝わってきませんでした。
また、全体的に地味な映像がスローテンポで続くのもマイナスポイントでした。予算の都合かもしれませんが、バトルシーンが少なく、CCGの出番が一瞬だったのも残念でした。もう少し赫子やクインケを駆使した、グールならではのバトルを見たかったところです。
というわけで、月山が金木を押しのけて前面に出過ぎたために、中身の薄い作品になってしまった印象でした。そういう意味では、月山は見事に金木を食ったと言えるでしょう。
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