「原作小説は「血を売る男」。ホラーではないので、ご安心ください」いつか家族に 岡田寛司(映画.com編集部)さんの映画レビュー(感想・評価)
原作小説は「血を売る男」。ホラーではないので、ご安心ください
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原作は中国の作家・余華によるベストセラー「血を売る男」(原題「許三観売血記」)。タイトルをそのまま邦題にしてしまうと、ホラー作品と勘違いされてしまいそうなので、変更は仕方無しといった感じでしょう。「血を売る男」という題名から暗いイメージを抱きがちですが、物語は極めてパワフルで感動的な方向へと向かっていきます。
主人公は、現場仕事で食いつなぐ男・サムグァン(ハ・ジョンウ)。手っ取り早く幸福を手に入れるため、彼が目論んだのは“売血”という方法です。字面の通り、自らの血を金に換えていきます。“売血仲間”から教えられた「血を増やすために、水を飲みまくる」「血を抜く前に、水道水で鉄分を摂取する」というトンデモ理論を実践。日常生活におけるドーピング――これがサムグァンの“最終手段”として確立され、後半パートへの伏線となっていきます。
本作では“売血”のほかに、もうひとつ“血”を象徴するものがあります。それが“家族”です。“売血”が功を奏し、美人の妻、3人の子どもを授かったサムグァン(結婚へと至る方法が、わりと、いや、かなり強引なところが笑えます)。しかし、息子のひとりが「他人の子だ(=別の“血”を継いでいる)」という噂が流れ始めるという展開に。邦題は、この辺りの流れに紐づいてくるのですが――それぞれの葛藤を飛び越え、大きくうねりながら迎えるクライマックスには、きっと涙腺を刺激されるはずです。
余談:「他人の子だ」と噂される子の純粋さと対比させるように、急に非道な親ぶりを発揮させるサムグァン。何度か石を投げたくなるかもしれませんが、グッとこらえましょう。
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