「人と人が仲良くなる方法が示されている。」グリーンブック Fさんの映画レビュー(感想・評価)
人と人が仲良くなる方法が示されている。
◆ストーリー
実話。ナイトクラブで用心棒をしていたトニーはクラブの改装工事の為に職にあぶれてしまう。次の仕事探しで辿り着いたのは黒人ピアニストのドン・シャーリーの運転手であった。
舞台は1962年のアメリカ。人種差別が根強いかの時代、トニー自身も黒人をよく思っていない。ホワイトハウスでも演奏経験のあるドンはトニーとは品格が別物。相性最悪の2人のアメリカ中西部を巡る8週間もの旅が始まります。
◆良かったポイント①
映画『シェフ』では親子関係の修復の模様が丁寧に描かれていましたが、この作品では交友関係が描かれていました。相性最悪の2人が旅を通して苦楽を共にして心を通わせます。
当初トニーはドンをいけすかない黒人野郎と思っていましたが、旅先で彼の見事なピアノ演奏を見てからは黒人であるドンが旅の先々で差別、不当な扱い、白人からの暴力を受けると必死に守ろうとします。ピアニストとしての彼を認めたからだと思います。
一方ドンは内心トニーを荒々しい、趣味の合わない野蛮なやつだと思っていますが、ドライバー兼マネージャー業もしてくれる彼の仕事ぶりから認め始めます。酒場で白人グループから因縁をつけられた時も、警察が不当に差別してきた時もトニーは率先してドンの前に立ちます。いつもすました表情をしている彼が時折笑顔を見せるシーンには個人的にグッと来ました。
◆良かったポイント②
話の本筋とはちょっとズレるのですが、トニーは奥さんにお願いされて旅先から手紙を書きます。ある時ドンがトニーの手紙を見てあまりの稚拙な内容から手紙の書き方を指南します。それがとてもロマンチックな文章で手紙を受け取った奥さんは顔を赤らめ涙を浮かべて喜びます。ママ友たちにダンナからの手紙を読み上げて自慢するシーンもあります。
女性は自分に向けられた好意に敏感です。女性は恋愛から結婚のステージに入ると幻想モードから現実モードに切り替わる、と言われていますが、心ではずっといつまでも一人の女として見て欲しいんですね。
◆黒人差別の一端を見た!
黒人差別と言っても実際どのようなものがあったのか知りませんでしたが、こんなに酷い物とは。酒場に行けばいきなり白人に因縁をつけられるのも当たり前だし、ドンはホワイトハウスでの演奏経験がある程のピアニストですが旅先の演奏会場ではトイレが白人とは別、楽屋は物置スペース、本来ならVIP扱いのはずなのに白人と同じ場所で食事をさせてくれません。真面目な顔をしたホテルのウェイターが「あなたはここで食事が出来ません、しきたりなのです。ご理解下さい」と丁寧に断りを入れるシーンはゾッとします。それに警察官まで差別してきます。恐ろしい。
◆全然話変わってくるんですが
旅を通じて苦楽を共にして、互いの仕事を一生懸命こなし、同じものを食べて色んなものを共有する、そしてお互いを認めて、お互い尊敬する。人と人が心を通わせる方法の1つがこの作品で示されていました。
映画の内容とは話が変わってきますが社会での女性の扱いや、これからの男性の在り方などが論じられる時に結構一方向的だと思うんですよね。子供にとって良影響なのは母親からの母性と父親からの父性の両方を受け取る事だと思っています。これからの時代は片方が強くあるべき!とかではなく、本当に必要なのは男性と女性がお互いにリスペクトする事だと思います。トニーとドンのように。