劇場公開日 2019年3月1日

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「『コパカバーナ』のトニーの珍道中?」グリーンブック よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『コパカバーナ』のトニーの珍道中?

2019年1月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

1962年のニューヨーク。有名クラブ“コパカバーナ”で用心棒を務めるイタリア系アメリカ人のトニー・リップはクラブの改装のために無職となってしまう。家族思いのトニーはそれでも明るく振る舞い家族に内緒で質屋に行ったりして小銭を稼ぐも実入りはたかが知れている。そんな折医者がドライバーを探しているので面接を受けないかとの連絡を受けて飛びつくトニー。教えてもらった住所を訪ねるとそこはカーネギーホール。医者だと勘違いしていたが相手は著名な黒人ピアニストのドン・シャーリー。8週間に渡って南部の各都市を巡るツアーのドライバーを探していると語るシャーリーを見て動揺するトニー。実はトニーは大の黒人嫌いだった・・・からのエボニー&アイボリーなロードムービー。

無教養で乱暴でおしゃべりのトニーと幼い頃から音楽の才能に長けロシア留学も果たしたインテリでリッチなシャーリーは完全に水と油、しかしステージ袖でシャーリーの演奏を聴いたトニーは目を丸くする、こいつは天才だと。一方ニューヨークのハイソな世界に身を置き庶民が親しむ黒人文化を何も知らないシャーリーは粗野な上におしゃべりが止まらないトニーに頭を抱える。そんな2人が黒人向け観光ガイドのグリーンブックを頼りに黒人差別があからさまな南部で様々なトラブルに巻き込まれる珍道中に場内大爆笑。そんな2人がぶつかり合いながら次第に心を開いていく様はとんでもなくキュート。それでいて流麗かつテクニカルなピアノ演奏にシャーリーの感情を滲ませる演出は物凄く繊細。ポスタービジュアルでも顕著な1962年製キャデラックのボディカラーに象徴される通りオッサン2人の友情が鮮やかで美しいです。ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの演技も非の打ちどころがどこにもない素晴らしいもので、オスカー各賞ノミネートに何の疑いもない傑作でした。

一方で気になることが1つ。コパカバーナで働くトニーといえば、バリー・マニロウの名曲『コパカバーナ』の歌詞に出てくるバーテンダーもトニー。こっちのトニーはチンピラのリコと乱闘の末死んでしまいますが、実在のトニー・リップにインスパイアされてたりするのでしょうか。

よね