プロミス 氷上の女神たちのレビュー・感想・評価
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スポーツコメディかと思いきや、涙涙
最年少選手役で、火の女神ジョンイのジョンの子役時代の俳優さん(チン・ジヒ)がでてます。
急に寄せ集めで女子アイスホッケーチームを作ることになり、メンバーは、元北朝鮮の選手、元ショートトラック選手、元フィギュア選手、ローラースケートが得意な事務員等等、人数もかつかつで小学生にも負けるポンコツチーム。メンバーも仲が悪くて喧嘩ばかり。
作った協会も目的が五輪誘致のためで、本気で強いチームなど作る気もなく、練習場もユニフォームもろくになくて選手は苦労する。
そして、青森でのアジア大会に出場することになって…。
後半、脱北者のイ・ジウォンがなぜ妹を北に置いてくることになったのかが明かされ、その妹が北朝鮮チームにいることが試合中に分かって…という辺りから、涙涙。
試合シーンは迫力があるし、ホッケーの詳しいルールを知らなくても十分楽しめます。
引き裂かれた姉妹愛
スエ扮するイジォンは、脱北者ながら韓国アイスホッケー代表チームに選出された。
実話に基づく話とはいえ前半では、泡沫候補の監督にショートトラックだとか寄せ集め軍団の選手たちがにわか仕立てで国際試合に勝てる訳がないでしょと言う設定だったが、後半に向けてイジォンが脱北するときに期せずして妹を置き去りにしてしまったいきさつが分かってからがぜん気持ちが引き締まったな。
脱北するのは命がけだから突発的に様々な事情が起こるんだろうけど、引き裂かれた姉妹愛が率直に表現されて胸に迫ったよ。良い映画だったな。
オーガズムからカタルシスへ
アジア冬季大会のために女子アイスホッケーチームが急遽作られることになり、元男子選手で怠惰な生活を送っていたカン・デウンが監督に抜擢される。脱北者で北朝鮮チームのエースだったイ・ジウォンを熱烈なラブコールで選手に引き入れるも、なかなかメンバーが集まらない。アジア大会では4ヵ国しか出場しないから1勝すればメダルが取れると安易な考えに惹かれた者もいたが・・・主な選手6人が集まった。
○イ・ジウォン・・・脱北者だが妹ジヘだけをやむを得ず故郷に残してきたことが気がかり。脱北者として見られることが嫌でフィンランドに移住する夢がある
○チェジョン・・・ショートトラック選手。人気選手を転倒させたことで国民的嫌われ者となってしまった。本人はホッケーへの派遣だと言ってる。
○キム・ガヨン・・・崖っぷちフィギュアスケート選手。結婚願望あり。
○コ・ヨンジャ・・・元フィールドホッケー選手の太ったおばさん。メダルが欲しい。
○シン・ソヒョン・・・インラインホッケー選手の中学生。最年少選手と呼ばれたい。天才的GKぶりを発揮する。
○チョ・ミラン・・・協会の事務員。ローラースケートが得意で、日当が貰えるという安易な理由で参加。コーヒー淹れるのが上手い。個人的には彼女が一番好き!
といったデタラメな寄せ集めチームだったが、最初は小学生チームにも負けるも、合宿を行い徐々に力をつけていき、YMCAの助力も得ることになった。そして世界大会の布石として青森で開催されるアジア大会に参加することになった。しかし、4ヵ国しか出場しないと思われていたのに北朝鮮チームも参加することになりメダルが遠のいてしまい・・・
前半は韓国映画らしいコミカルな演出で徐々によくあるスポ根ものへと進化する。そして急造チームの理由も冬季オリンピックの誘致するためだったと聞かされるも、もう選手たちの絆は壊されることはない。各選手が心を一つにする様子はバラバラながらも素晴らしい。ただ、他のスポーツ映画と異なるのは脱北者の主人公とその妹の絆だろう。ラストの試合は涙なしでは観られない。
尚、実際の青森大会の中国戦では30対1という屈辱的な得点差であったりする。成長したとは言え、そんなに僅差のゲームになるほど甘くないってことか。2018年に平昌冬季オリンピックが開催され、主催地の韓国チームはもちろん参加資格があったのだが、直前になって不参加の北朝鮮チームから派遣され南北合同チームとなったことは記憶に新しい。政治的合同チームではあったが、もしイ・ジウォンとリ・ジヘの姉妹の絆がそのきっかけを生んだのなら、その過程も映画になればいいのになぁ・・・まさしくカタルシス。
2022年2月4日からコロナ禍にもかかわらず北京冬季オリンピックが開催されますが、東京オリンピックは興味なかったものの、今回は見る気満々です!
スポ魂に分断をからめる
韓国映画に日本/日本人が出てくるばあい、かならず卑劣に描かれる。
この映画では、対日本戦で日本人選手がスティックで引っかけて韓国人選手を転ばす。会場はアウェーの青森。
解説者が大荒れ。ヤイ、ケセッキァ!
真っ赤になって怒る解説者を墨舌チョジヌンがやっていた。
中国でも韓国でも──日本人てのは卑怯な奴らなんだよと、描写するのが通例で、近年見たのでは軍艦島がえぐい。チャンイーモウの金陵十三釵はもっと扇情的で新浪微博で炎上騒ぎがあった。
スキー選手の活躍を描いた映画「国家代表」のアイスホッケー編という位置づけで「国家代表2」の原題がある。お笑い出身のキムスルギ、韓ドラヒロイン、オヨンソやパクソダムも出ている。パクソダムはしばしばキムゴウンや剛力彩芽と比較されるひとえだが、北朝鮮の選手役で、完全すっぴんだった。
ちなみに北朝鮮の描き方は一貫して迎合で、悪玉にも敵にもしない。こてこてな感動へもっていくが巧い映画だった。
映画がクオリティを備えているとき、国策描写が暴れずに収まることがある。軍艦島なんか滅茶苦茶だが、巧いので見る。見ると、影響を受ける。若ければ日本を憎み、卑下するんじゃなかろうか。自分の史観を顧みても、たいていメディアから受動している。
しかし、エンターテインメントたる映画を鵜呑みにするようでは人間おしまいだし、史観とは、月日や知識とともに変遷するものでもある。
ただ、雑ぱくな風説を形成するのに、巧い映画は凄まじく有効に立ち回る。
とりわけ、何も知らない世界、たとえばスポットライトを見れば、聖職者ってのは、信用ならない連中だと思うだろう。コンテイジョンを見れば、新型コロナもあんな感じで拡がる──と思うだろう。
その雑ぱくな印象が、けっこうわたしたちの考え方を形作ってしまう場合がある。映画に扇情描写が使われるのはその理由がある。
しかし、ほんとにそうだろうか。
もし、スポットライトの影響下にあるわたしが、現実世界で聖職者と相まみえるなら、むしろスポットライトを忘れ、ニュートラルであろうと努めるだろう。米映画とわたしの現実が、別物であることを知っているからだ。邪険にされたら町牧師もいい迷惑である。
コンテイジョンを見たら感染を免れる──わけもない。
扇情は人によっては意味がないし、わたしたちが各々、見知ったものの影響をダイレクトに態度化してしまうなら、社会はカオスである。
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